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■ 国際専門会議 2009年11月22〜23日  / 公開フォーラム 2009年11月24日

参加国:ブルネイ・ダルダラーム/カンボジア/中国/インドネシア/日本/韓国/ラオス/マレーシア
    /ミャンマー/フィリピン/シンガポール/タイ/ベトナム

国際専門家会議では、各国で女性の貧困根絶や暴力撤廃についての努力が粘り強く行われ、一定の進展をみていることが、政府、NGO双方から具体的に報告された。しかし、ジェンダー平等や女性のエンパワーメントなどの目標達成にはほど遠く、今後とも、企業、研究教育機関、地域共同体などとも連携して、共同で努力することを継続させることの重要性などを盛り込んだ「勧告」が採択された。


公開フォーラムは、主として学生たちにASEAN+3の女性の現状を伝えメッセージを送ろうと行われ、1000人以上の若い女性たちが出席した。すべての参加国代表、坂東真理子・昭和女子大学学長、パトリシア・リクアナン・ミリアム大学学長に加え、福島瑞穂・男女共同参画担当大臣も参加して、アジアの女性の課題と力強さを伝え、みんながいきいきと生きてゆける世の中をつくろうと呼びかけた。

■ 国際専門会議 / 政府および民間団体の報告

  ブルネイ・ダルサラーム / カンボジア / 中国 / インドネシア / 日本 / 韓国 
  ラオス / マレーシア / フィリピン / シンガポール / タイ / ベトナム

  


■ 公開フォーラム / 政府および民間団体の報告

  

  開会のあいさつ Leticia Ramos Shahani(ミリアム大学学部長、フィリピン前上院副議長)

  基調報告 Thelma Kay(前ESCAP社会および女性問題担当部長)

 
 ブルネイ・ダルサラーム
 

ハジャ・ノリダ・アブドール・ハミド
文化・青少年・スポーツ省共同体開発局局長代行

1  序論

世界の貧困の重荷が女性の上に不均衡に重くのしかかっていることは以前から知られている。統計によると、女性は男性に比べて貧困に陥りやすく飢えの危険にさらされやすい。これは教育、ヘルスケア、雇用、資産管理において、女性が直面している構造的差別のためである。貧困の影響は女性の間に広く見られ、多くの女性が清潔な飲み水、衛生、医療、適正な雇用などの基本的な権利さえ無しに放置されている。女性が世界の貧困層の70%を占めるという概算もある。女性は男性に比べ低賃金であることが多く、2008年の平均賃金格差は17%だった。女性はビジネスや自営業のために信用貸しを申し込んでもきびしい差別に直面し、意思決定にほとんど関わることのない、不確実な、安全でない、低賃金の仕事に集中することになる。貧しいということはまた、暴力に対する保護もほとんどないという意味にもなりうる。

2  ブルネイ・ダルサラームにおける女性の地位

ブルネイは、女性のエンパワーメントはそれ自体重要な目的であると同時に、全ての側面での女性の前進に欠かせないものと認識している。2009年の暫定的な統計によると、女性はブルネイ総人口の47%を占めている。 就業者人口の39%が、給与、利潤、家族収入のために働く女性で、ブルネイは、国の社会経済的発展に果たす女性の役割の重要性を十分に認識し承認している。ブルネイの憲法には男女差別は一切なく(ジェンダーフリー)、女性に対する差別の解消を規定する特別な立法はないものの、法律は概して男性女性を同等に扱っている。ブルネイ・ダルサラームのスルタン国王陛下の政府は、民間部門の強い支持と協力を得て、人種、信条、性別を問わず全ブルネイ国民の生活の質の向上追求のために不断の努力を重ねている。

2.1  女性と教育
全ての国民に教育の機会を与えることは、ブルネイの教育政策の根本目的となっている。政府の教育機関での教育は全国民に対し無料で提供され、学生達は平等な利得を享受している。9才以上の女性の識字率は、1981年の73.7%から2001年には91.5%、そして2007-2008年には98.2%に上昇している。中等教育レベルにおける女子数は、男子を凌駕しており、2004年高等教育レベルにおいて、女子学生数は男子学生よりも32%多く、2006年の女子卒業生は全卒業生の64%を占めた。
2.2  女性と雇用
我が国の女性達の教育達成度がより高くなったことで、専門職、技術職、管理運営職につく女性の割合は更に上昇し、労働力人口に参与する女性の比率も1981年の31.3%から2008年56.7%に上昇した。2009年の暫定統計も労働力人口の39%を女性が構成することを示している。公的および民間部門での女性に対する広範な雇用の機会が、これを可能にしている。このことは、1991年から2001年の間の経済活動に参加する女性の年間成長率が7.9%を示し、女性の労働年齢人口の成長率の2倍であるという事実を見れば明らかである。この結果、我が国の女性達は、意思決定力のあるより高い地位での恒久職を占める能力と適性をさらに獲得しつつある。女性達が金銭面で貢献することは、本人および家族の生活水準の向上を保証するものである。

経済発展における女性の関わりは肯定的なものである。女性も男性もともに、国の経済強化にむけて献身的にかかわっている。女性の労働への参加の増大は、国全体の発展だけでなく生活水準にも大きな影響を与えている。

2.3  女性と健康
女性がヘルスケアを手頃な費用で平等に利用出来ることが、ブルネイにおける女性の生活の質を高め全般的な健康をもたらしてきた。女性についての各指標は、女性の寿命が男性のそれよりも長い先進国の指標とよく肩を並べうる。2008年、女性の平均寿命は79.8才、男性は76.6才だった。同時に、女性を含む全国民層における死亡率もまた減少している。

女性がより情報に通じ、力をつけ、生活水準を向上させ、改善された母子健康サービスをうけられるようになるに従い、乳幼児死亡率は減少してきた。乳幼児死亡率は、1970年代の生児出生千人につき30例以上から、現在の生児出生千人につきそれぞれ7例および10例の死亡にまで大幅に減少した。2002年、妊産婦死亡率は出生千人につき0.3だった。

2.4  女性とシェルター
女性の所有権に制限はない。女性も同等に土地所有権を持つ資格があるし、政府従業員のための無利子住宅ローンは、男女被雇用者のどちらもが平等に利用できる。女性はまた、全国住宅開発プログラムや土地無し先住民市民住宅計画のような計画による住宅を申し込む資格を有する。住宅開発計画の主たる目標は、全てのブルネイ人ことに低収入の家族に、全国住宅計画や土地無し計画のもとに妥当で入手可能でかつ快適な住居を提供することである。住宅開発局のほかに、首相府、ブルネイ・イスラム宗教会議、スルタン・ハジ・ハサナル・ブルキア財団、各地域事務所、地域社会開発局、など多数の機関が最貧層世帯に住宅を供給しており、その多くは無料である。

2.5  女性とビジネス
ブルネイ・ダルサラームの女性は、我がビジネスマンと肩を並べる事業能力を持つことを証
明している。石油とガスに頼る経済を多様化させる潜在的な手段として、小中規模事業(SME)部門を発展させようという政府の呼びかけに、女性は積極的に応答している。SMEは民間部門の雇用の92%を提供しており、その半数以上は女性が所有するものである。政府と民間部門は、奨励金や起業家支援を平等に受けられるようにして、女性達の積極的な関わりを促進・育成している。支援方法には、財政的補助計画、情報・通信技術へのアクセス、ビジネス・カウンセリング、更にワークショップ、セミナー、専門家による指導(コンサルティング)などによるトレーニングがある。地域社会開発局はまた、社会的セーフティーネット・プログラムの一部として、貧困女性に、無利子、無担保、保証人無し、管理手数料無しの小規模融資の仕組みも提供している。

ブルネイ・ダルサラームにおける貧困の状況

ブルネイ・ダルサラームは、ミレニアム開発目標のほとんど全ての目標を達成している。国の持つ自然資源に支えられた、教育、健康そしてインフラへの投資の増強は、国連開発計画(UNDP)の人間開発指数2007/2008において我が国が前回の調査から4位上昇、比率0.894で177カ国中第30番目に位置する推進力となった。ブルネイはまた、2006/2007にレスター大学が行った世界幸福度マップでも9位にランクされた。

しかしやはり、少数ながら貧困を経験する層は存在している。ブルネイ・ダルサラームでは、貧困という事態の本質は、「絶対的」というより「相対的」なものである。我が国における相対的貧困は、教育達成度、経済活動への参加、健康状態、個人の選択とチャンスを活用する能力の格差によって、収入と生活水準の不均衡をもたらしている。ブルネイの最貧世帯にとって、貧困は収入の欠如にとどまらない多面的性格を持つ。そのため貧困層では、生活の基本的必要を満たすための便益の利用が不十分になる。最貧世帯はまた、世帯主の教育程度が低かったり正規労働に参加していない世帯でもある。

現在、ブルネイに公式の貧困ラインは存在しないが、経済計画開発省が、最低生活費(最低限の基本的ニーズを満たす費用)を確立する努力を続けている。2005年の家計支出調査では、調査対象となった全59,900世帯で、ブルネイの2005年における一世帯収入の平均値、中央値はそれぞれ4,661ブルネイドル(295,000円)、3,640ブルネイドルBND(230,397円)だった;都市部世帯での収入平均値、中央値は、それぞれ4,868BND(308,101円)と4,075BND(257,911円)で、一方村落部でのそれは、4,075BND(257,911円)、3,020BND(191,139円)だった。8.3%の世帯が月収入1,000BND(63,291円)以下;また3.1%が500BND(31,645円)以下で、68.7%の世帯が一人あたり月収額1,000BND(63,291円)以下であり、8.07%で世帯主が無教育で、このうちの30%の世帯が月収入1,000BND(63,291円)以下だった。

公式貧困ラインが設定されていないため、ブルネイは自国の貧困の指標として、毎月福祉援助を受けている福祉受給者の数も使用している。2009年5月では、地域社会開発局とブルネイイスラム宗教会議によって登録された福祉受給者数は8,234世帯主で、扶養者を含めた受給者は総計29,538人だった。この数字から、福祉受給者は総人口の7.4%、福祉支出は年額約2,200万BND(13億1200万円)になる。こうした福祉給付は地域社会開発局とブルネイイスラム宗教会議によって提供されている。

貧困撲滅の課題は、ブルネイ・ダルサラームのスルタン国王陛下がブルネイは貧困ゼロを目指すべきであると指示して以来、国の最重要課題となっている。この指示に応じて、文化・青年・スポーツ相を首班とし、関係するいくつかの省の副大臣・事務次官からなる「貧困に関する特別委員会」が設置された。特別委員会の報告は、6人の閣僚からなる閣僚会議である社会問題国民会議にあげられる。

ブルネイイスラム宗教会議によって集められた未分配の十分の一税(tithes)の支出も貧困撲滅のためのその他の努力の一つで、これは今後1、3、4または5年にわたり3,894の貧困家庭を効果的に貧困サイクルから抜け出させ状況を緩和するだろう。住宅負債の重圧下にあった190家庭も、この未分配の十分の一税の配分を受けた。首相府によって調整される「素早い成果(Quick Win)」計画のもと、貧困者への住宅提供も実施されている。

3.1  女生と貧困
R.J. シーク(Sheak、1988)によると、貧困のジェンダー要因の存在が調査によって継続的に確認され、それは女性を世帯主とする家庭が増えるにつれて更に顕在化し、より顕著にさえなっている。この傾向はブルネイでも確かに見られる。2009年10月31日の時点で、地域社会開発局は4,714世帯主と9,216名の被扶養者に福祉給付を行っていて、受給者総数は13,930名になっている。このうち71%(3,343)は女性の受給者で、被扶養者総数の79%(7293)を養っている。これらの数字は、女性が離婚、死別、あるいは夫の収監により家族を養わざるを得なくなったとき、彼女たちを筆頭者とする世帯が広く貧困に陥るという明らかな傾向を指し示している。この三つのカテゴリーに入る女性が、貧困女性の67%を占めている。

共働き、双親から、片働き、片親へという家族動態上の変化は、男性に対するよりも女性に対してより大きいインパクトを与えている。これらの女性が低収入層に属し、教育水準も低く、自分自身と扶養家族を支えるためにより大きい財源を手に入れる機会が限られている場合なおさらである。前夫が養育支援を出来ない、あるいは拒否する場合、事態は悪化する。

4 女性に対する暴力

他の諸国と同じように、ブルネイの女性も虐待と暴力の危険を免れてはいない。2004年には229件の女性に対する犯罪が報告された。前年比45例の増加である。女性に対するこれらの犯罪のほぼ52%が妻への虐待であり、13%が女性の慎ましさを踏みにじるものであった。女性に対する犯罪の憂慮すべき増加は、ブルネイの社会問題が同様に増加していることの一つの現れである。これに応えて、「社会問題処理のための全国委員会」が2000年1月に設立された。この委員会は女性問題を、取り組むべき社会問題の一つと位置づけている。

ブルネイ・ダルサラームでは、女性保護に関してさまざまな法律が用意されている。女性と少女に対する性的搾取は、1938年の不法性交法(Unlawful Carnal Knowledge Act)と1972年の女性少女保護法(Women and Girls Protection Act)によってカバーされている。 前者では16才以下の少女との性交は犯罪と見なされ、後者は、女性と少女の売買を含む違法または非道徳的な目的から女性と少女を保護する。

1999年、「緊急命令(イスラム家族法)」が施行された。これは、結婚、離婚、扶養、後見その他家族生活に結びついた事項についてのイスラム家族法に関連した規定で、この中で男性は、親権の有無にかかわらず、衣服、食糧、医療、教育などの便宜を与えて自分の子どもを扶養する義務があるとされている。 同じ年、イスラム家族法によってカバーされない女性の権利を守るために、「緊急命令(既婚女性法)」と「幼児後見命令」が出された。

女性と少女の保護を司る法律は、他の制定法、つまり刑法22章(主に322, 324, 334, 375条)にも見いだされる。女性と子どもが暴力から護られることを保証するために、「家庭内暴力命令」と呼ばれるもう一つの規定が現在起草中である。

地域開発局もまた、タマン・ヌール・ヒダヤ(Taman Nur Hidayah )1,タマン・ヌール・ヒダヤ2と呼ばれる二つの福祉ホームを後見している。この両者は女性と少女の安全、保護、リハビリのために特別に創立された。家庭内暴力の事例に供給されるサービスには他に、シェルターホームでの人格開発プログラムや、個人、グループ、家族へのカウンセリング、アドバイス、ガイダンスサービス、そしてアフターケアーのためのモニタリングなどがある。臨時シェルターセンターも一つあって、その他の社会的問題で自分の家を追われた、女性やその子どもを含む市民に住居を提供している。

5  社会的セーフティーネットプログラム

ブルネイは、国の社会経済発展における女性の役割の重要性と、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントが、基本的人権であるばかりでなくそれ自体重要な目的であり、女性の前進および貧困との戦いにおいて決定的であることを十分に認めている。

基本的ニーズを供給することが貧困縮小に貢献することから、ブルネイは、教育、健康衛生サービス、衣料、日々の生計維持、清浄な水と下水設備、などの基本的必要品を、あるものは無料であるものは多額の助成のもとに、性別にかかわらず全国民に提供している。性差よる偏向無しにこうした人間の基本的権利を提供することは、ブルネイの全ての社会的セーフティーネットプログラムと結びついた貧困軽減戦略のひとつで人ある。
基本的ニーズの供給に加え、社会福祉プログラムが、ブルネイにおける貧困女性のための社会的セーフティーネットプログラム全体の不可欠の要素となっている。

社会福祉プログラムは、地域開発局を通して、主として政府により管理運営される。同局は1954年の高齢者障害者年金法の管理主体として1954年に初めて設置された。同局の展望するところは、現在・将来の社会経済的変化によってもたらされる難問に立ち向かえるよう、個人、家族、社会、国家の発展を促すという文脈のもと、ブルネイの力量を強化し増大することである。同局は、福祉給付を、現金または現物で支給する責任を負う。すなわち、毎月の生活補助、教育手当、食糧、自然災害時の住宅その他の給付;老齢年金;貧困、弱者層の自立達成のための雇用確保や小規模起業における援助、さらに保護、リハビリ、カウンセリング。地域開発局の他にブルネイイスラム宗教会議も福祉援助も行っており、一方、スルタン・ハジ・ハサナル・ボルキア財団は独自の援助計画をもって貧困学童および孤児を支援している。

貧者・弱者の福利への配慮についてイスラムの教義に深く根ざした根本的価値感を維持することの重要性を認識し、直面する社会経済的困難を乗り越えられるよう貧者弱者を支援するさまざまな社会福祉プログラムが、既に準備されている。

5.1  老齢年金
老齢年金の支給と高齢者に対する福祉援助は、高齢者を貧困から守るための手段である。性別にかかわらず、60才以上に達したブルネイ市民と永久居住者は、1954年の高齢者障害者年金法に規定された条件に従って、資産などにかかわらず、一ヶ月250ブルネイドル(15,822円)の高齢者年金を受けることが出来る。障害者手当も、15才に達した障害者に月額250ブルネイドル(15,822円)が支給される。視力喪失者、精神障害者の被扶養者にも、15才以上には188ブルネイドル(11,898円)、そして15才未満には133ブルネイドル(8,417円)の手当が支給される。

5.2  月ごとの福祉給付
月ごとの福祉給付または財政支援は、対象グループ内の、援助を要する家族に与えられる。その中には、寡婦、離婚者、孤児、寝たきりの人々、危機状況にあるその他の対象グループが含まれる。地域社会開発局による福祉給付は、一ヶ月成人一人あたり200ブルネイドル(12,658円)、子ども65ブルネイドル(4,113円)の生計手当のかたちで支給され、子どもが学校に行っている場合は教育手当月額60BND(3,797円)も支給される。ブルネイイスラム宗教会議も、登録された貧困イスラム教徒に福祉給付を行っている。
5.3  起業家プログラム
上で述べた貧困撲滅プログラムは手当給付であり、主として、公的資源を援助を要する世帯や個人に譲渡するというものである。ブルネイはこうしたプログラムを続行していくが、それが「貧困の文化」を促進し、貧しい人々に自分たちの力で貧困に打ち勝つのは無理だと感じさせてしまう可能性も当然認められるところである。従って、貧者に力量をつけ、貧困の悪循環を打ち破る力が自分たちにはあると気づかせるほうへ戦略の方向性をシフトする必要がある。

この点で、一つの重要原則は、自立、新技能、各種サービス、そして財源の入手を更に容易にして貧困者の能力を拡大することである。適切な戦略によって、起業と収入創出を支えるため経済活動を奨励・強化する必要がおおいにある。

5.3.1  自立に向けた支援計画
2006年6月、地域開発局は管轄する福祉受給者に対する自立支援計画を導入した。これは小規模融資計画で、小規模ビジネスの起業または拡大のための当座資金(シードキャピタル)を、無利子、管理手数料無料、保証人・担保無し、かつ多様な返済方法で提供するものである。自立支援計画の主目的は、福祉受給者の財政負担が軽くなるよう援助し、生計維持を福祉給付に完全に依存しないよう、福祉受給者の依存的精神構造(クラッチメンタリティー)を変え、低収入または収入が日々の生計の維持に不十分な貧窮者や失業者からなる対象グループの間に自立と自立維持の文化を鼓舞し、起業家としての意志力と共に収入をもたらす技能を身につけるようにすることである。対象グループの生活の質の向上がこの自立支援計画の成功の指標であり、それは彼らが生活水準を改善させ、自立自足の起業家となり、持続可能な製品とサービスを産する将来性のある事業を運営するということである。

それぞれの応募者は3,000BND(189,873円)以下のローンを組むことが出来、返済は、普通は3ヶ月の猶予期間の後、月50BND(3,164円)という低額から可能である。2006年6月から2009年3月の間に、自立支援計画はさまざまな事業分野の92の応募者を承認した。その中には、食品と仕出し業(ケータリング)、農業、漁業、仕立てと食料雑貨店などがある。参加者の66%は女性である。支出総額に対する返済率は28.6%である。

6  提言と結論

貧困の中の女性の不利な立場には議論の余地がない。女性の貧困の重荷を軽減するために多くの努力がなされてきたが、社会的問題はまだ続いている。従って、現行の
社会セーフティーネットプログラムの見直しと再評価がなされるべきであり、世界中の女性、とりわけ我が東アジアとASEAN地域の女性が今日いまだに直面している情け容赦のない貧困の影響によりよく取り組むため、より効果的な新しいプログラムが確立されるべきである。

女性のエンパワーメントは、貧困サイクルを止めるための決定的な要因である。女性が男性より貧困に陥りやすいことを認め、さらなる貧困プログラムが女性に向けられるべきである。グラミン銀行の小規模融資プログラムや発展途上国におけるその他多くの貧困軽減プログラムの成功に見られるように、貧困女性を照準としたプログラムはより大きな効果を生みやすい。持続可能な生計を確保するのに必要な実用的なスキルを、女性と女性の属するコミュニティーに提供するプログラムは、助成金の直接交付よりもより効果的であろう。「魚を与えればその人は一日生きられる。魚を捕ることを教えれば一生生きていける。」というかの有名な格言のとおりに。

 カンボジア

ボーチリム・テ女性省・副局長

1.はじめに

貧困はカンボジア社会の深刻な問題である。カンボジア政府(RGC)も施政方針で貧困の撲滅を優先事項に掲げている。総人口1300万人のうち、女性は51.5%を占め、貧困は、自分の親、夫、子どもたちのため、家族の経済に責任を負っている女性の毎日の生活を圧迫している。最近の急速な経済成長にもかかわらず、ジェンダーの不平等は依然としてカンボジアの重要な問題である。他の国々と同様、貧困の女性化は、統計的な証拠と貧困の女性化を引き起こす他のさまざまな要因に示されるように、深刻な問題である。

貧困の撲滅と取り組むカンボジア政府(RGC)の施政方針は、「カンボジアの成長、雇用、公正、効率の四辺形戦略」で、最初に第3次政権(2003-08)で策定され、最近、第4次政権(2008-13)で、「四辺形戦略第2段階」として再確認され、改良され、拡大された。良い統治を達成することが持続可能な開発の前提条件として、戦略の中心に置かれた。これを基盤として戦略は4つの優先プログラムの分野を中心に展開する。それは、農業部門の強化;物理的インフラのさらなる復興と建設;民間部門の開発と雇用創出;能力の形成と人材開発である。四辺形戦略は、女性とジェンダー平等に特に言及し、女性に的を絞った能力開発を支援し、貧困の削減と経済開発に対する女性の貢献を認めている。「女性は経済と社会の屋台柱である」と述べられている。

四辺形戦略は国家戦略的開発計画(NSDP)によって運用できるようにされている。この計画も国の貧困削減戦略で、最初は2006-2010年に実施されるように設計されたが、現在では第4次政権の期間に相当する2013年まで延長されている。NSDPは「カンボジアのミレニアム開発目標(CMDGs)を達成するための成長、雇用、公正、効率」戦略とサブタイトルがつけられている。このようにNSDPは完全にCMDGsの達成に焦点が当てられており、その43の主要到達目標のうち28はCMDGsの主要到達目標である。NSDPは、貧困の削減はカンボジア政府の最優先課題であると述べている。しかしながら、貧困削減目標と他のCMDGs目標の達成は、CMDGsの枠組みの一部だとははっきり言えない他の目標やプロセスに取り組まずには不可能だとも述べている。それにはとりわけ、政治的・社会的安定、法の支配、公共行政の重要な改革、インフラの開発、バランスのとれた公正なマクロ経済の成長が含まれる。NSDPはジェンダーに敏感で、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関係する重要なジェンダー平等目標を含んでいることのほかに、あらゆる主要部門に、ジェンダーを組み入れた。

2008年11月に作成された、NSDPの中間報告では、計画の最初の2年半の進歩が検討されている。そこには、世界的危機とさまざまな潮流が組み合って押し寄せたので、ここ数年の狭い層を基盤とした成長は外部からの衝撃に対して脆弱だったことが記されている。それ故に、経済基盤を広げるために農業の発展と生産性および農村の所得の増大をいままで以上に重要視し、もっと持続可能にして、農村の貧困問題ともっと直接取り組む。改訂された戦略も、国民の最貧層や最も脆弱な人々に対する経済危機の影響を軽減するために、こうした人々にセーフティーネットを提供する必要性を認めている。2008年の改訂では2006-2010年の間の公共部門の投資が35億USドルから42億USドルに20%増加している。この63%は農村地域に配分されている。イニシアティブの多くも特に女性の問題に取り組んでいる。

10年間(1997-2007)、カンボジアは10%以上の経済成長で利益を得てきた。経済成長は2008年には5%に下がり、2009年の予想は6%から-0.1%である。(カンボジア政府+6%、アジア開発銀行+2.5%、国際通貨基金-0.5%、世界銀行-1.0%)一人あたりのGDPは1995年の297ドルから2008年には625ドルになった。成長の時代に、カンボジアは貧困を1994年の47%から2007年の30%に削減することに成功した。農村地域では貧困レベルはわずかに上昇し、35%だった。しかしながら、貧困は大幅に減ったが、人口の3分の1は依然として貧困線以下で生活している。扶養家族が多い女性が世帯主の家庭は極貧層に含まれる。

カンボジア経済を推進するものは、衣料品工業、建設、観光、農業部門だった。衣料品工業だけで総輸出額のほぼ70%を貢献した。しかしながら、零細、小規模、中規模企業(SME)部門もカンボジア経済において重要な役割を果たしているし、女性はこの部門に積極的に従事しているとも記載されるべきである。カンボジア企業の97%は零細企業である。たったの2%が小企業で中企業と大企業は1%以下である。カンボジア人のほぼ80%が自営業者か無給の家族労働者で、その大半は女性である。ほとんどの零細企業主はインフォーマル経済に属し、GDPのほぼ60%を稼ぎだしている。従って、インフォーマル経済はこのように大きな役割を果たしているが、インフォーマル部門に対する女性の貢献と同様、インフォーマル部門の本当の重要性は隠れたままである。

統計によると、カンボジアの経済で女性は重要な役割を果たしていることがわかる。女性の参加はあらゆる主要部門で高い。工業の44%、労働者の49%、サービス業の36%、農業の50%である。衣料品部門では雇用されている人の80%が女性で、男性は建設部門を支配している。

女性の事業主の高い割合からは民間部門で女性が重要な役割を果たしていることがわかる。特に家族経営の零細企業では、女性は家庭に居てそこから働くことが可能になる。

2 .問題の分析

2008年の世界的な経済危機で貧困が悪化する危険が高まり、貧困の女性化が促進されている。経済危機の影響でカンボジアの成長、投資、輸出、観光は落ち込んだ。そのことによって2009年の経済成長は圧力を受け、ほぼ0%である。多くの国々のように、経済危機はカンボジアの特定の経済部門に深刻な影響を与えており、女性が労働者の大多数を占める衣料品部門のような輸出指向部門ではとりわけである。衣料品部門では、労働者の80%は女性で、2008年9月以降、概算で70,000人が失職したが、これはこの部門の全労働者の25%に上り、この数字は上昇すると予想されている。女性労働者の収入も残業が無いせいで、劇的に落ち込んでいる。また、経済危機は外国に移住した人たちからの送金額にも深刻な影響を与えている。それは多くのカンボジア人の家庭にとって重要な収入源である。移住者の大部分は失職が予想されるか、すでに失職した。移住労働者の中には故郷に戻っている人もいる。しかしながら、故郷に戻ることを、すべての労働者が選択できるわけではない。農村には仕事を得る機会がないからである。また、危機の間接的な影響について深刻な懸念もある。例えば、出稼ぎ移民からの送金がないことは、家庭に不可欠な家計収入と社会的な保護を失う原因となっている。ほとんどの場合、女性と子どもはこのことで苦労している。

もう一つの間接的な影響は衣料品産業と観光産業に伴う仕事、あるいはその周辺の仕事がなくなることである。例えば、食べものを売る人やレストランなどである。このような小企業は、個人、ほとんどの場合は女性が営業しているか、無給の家族労働者が働いているが、多くの家庭にとっては重要な生計の源である。けれども保護されていない。というのは、それらはインフォーマル経済の分野に入るからである。こうした女性たちは危機に対する政府の対応策から恩恵を受けていない。

もっと調査が必要だが、現在進行中の経済危機で最も苦しんでいる人々の中に女性がいることはすでに明らかである。それは本質的に「女性と貧困の撲滅」の問題である。女性たちの貧困に立ち向かう戦略は、例えば、家計費の削減、一日に一度に食事を減らす、高い利息を払ってお金を借りる、インフォーマル部門で収入を生み出す別の仕事に従事する、売春と商業的な性行為の増加である。世界銀行は、経済危機のせいでカンボジアでは20万人以上の人々が貧困に陥ると予想している。このように経済危機は貧困を増やすだけでなく、男性と女性、都市と農村、金持ちと貧乏人の間にすでに存在している不平等や格差を拡大する。

カンボジアはジェンダー平等と女性のエンパワーメント促進にあたって格段の進歩を遂げた。女性は農業で対等の賃金を達成し(最近わずかに下降の傾向がある)、サービス業でも大きな進歩が見られるが、すでに述べたように、工業では1998年以降状況にあまり変化が見られず、2004年に上昇した後、後退している様に見える。概して女性のための経済機会は依然抑えられており、ほとんどの信用貸し、研修講座、サポートプログラムは女性のニーズに十分に対応していない。選挙で選ばれた女性議員は増加したが、女性はまだ政府や公の意志決定の場で少数である。伝統的なジェンダーに対する態度はまだはびこっていて、女性の栄養摂取量が低いこと、高い妊産婦死亡率、女性に対するHIVの影響の増大にはっきり現れている。また、女性に対する暴力を予防する法律は採択されたが、法律や関係する国家の行動計画の有効な実施を支援するためにさらに努力が必要である。教育の面ではジェンダー不平等の撤廃に向かって進歩があった。しかし、状況は、地理的位置や所得層によって異なっており、成人女性の識字率は依然としてきわめて低い。にもかかわらず、過去7年間に純入学率(NAR)、小学校純就学率(NER)、6-14才の非就学児の割合、初等教育でのジェンダー平等と地域の不公平の改善で、著しい進歩が見られた。それらすべては、2015年のミレニアム開発目標(CMDGs)の指標を達成する道筋にある。

現在の主な難題は中学校(LSS)の就学率、小学校と中学校の在籍率、15-24才の識字率で、それらはすべて目標より遙かに低い。農村地域の女子の非就学児数は男子より高く、女性の34%と男性の14.7%は読み書きができない。全体として、子どもの死亡率はかなり改善されたが、取り組まなければならない広い地域差が依然存在する。全体の出生率は改善されたが、高いまま(3.4%)で、妊産婦死亡率は継続して高く、現在、出産100,000件あたり、死亡は472人で、アジアで最も高い。新生児死亡率は出産1,000件あたり、66人で、妊婦の70%が妊娠中のケアをうけていて、改善しているが、妊娠中のケアと専門家が立ち会った出産は低いままで、とりわけ、低所得層では低い。また経済分野では、女性の52.3%が無給の家族労働に従事しているが、男性は29.8%にすぎない。このことは依然として重要な開発と女性の権利の問題である。

労働市場への女性の参入は常に男性よりも難しい。賃金労働者としての雇用機会は女性には限られていることが多い。その理由は社会的文化的障壁だけでなく、家族に対する責任の有無や要求される技能の欠如である。女性が収入を得るために就職する機会も非常に限られている。女性起業家に対する支援がないことは深刻なジェンダーの問題である。女性の小企業と零細企業はおしなべて以下の問題に直面している。起業するための家族の支援がないこと、会社を発展させるための経験がないこと、教育レベルが低く、零細企業に関する技術的な能力が十分でないこと、輸入品との競合、製品の品質が低いことなどである。女性には技能を向上させるための研修の機会がほとんどない。女性は、職業訓練の機会への参加、信用貸し、とりわけ、企業を設立し、大きくしていくための労働資本の利用、市場への参入が制限されている。

3. 政府の施策

女性と男性の格差を確実に削減するために、女性問題省(MOWA)はジェンダーの観点から実行し、監視し、評価するためのはっきりした指標を持つ、5年戦略計画を立案した。この戦略は国内の女性の貧困削減に貢献することが期待されている。
MOWAの5年戦略計画、Neary Rattanak 3は包括的にあらゆる分野と政策に取り組む。
Neary Rattanak 3(2009-2013)-戦略分野
女性の経済的雇用
― WDC(生活技術、起業技術、信用貸し)
― インフォーマル部門の開発
― 雇用創成
  公共の意志決定や政策策定の場に女性の参加を促進
教育、意識、態度の変化
女性と少女の法律的な保護(女性に対する暴力―ドメスティック・バイオレンス、ジェンダーに基づく暴力、性的搾取、人身売買、労働の搾取との闘いを含む)
女性の健康と栄養、HIVとの取り組みを促進

ジェンダー主流化プログラム
政策開発、監視と報告
政府改革プログラム(L&JR、PFM、PAR、D&Dなど)
部門戦略と実施(主要部門:教育、健康、司法、内政、労働などを含む)
国際的・地域的取り組み、報告など(CEDAW、ASEANなど)
援助管理(GDCC、TWG)

女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)と他の人権条約、ASEAN宣言などを含む、国際的地域的取り組みはさらにこれを支援する。ジェンダーに関係する法律や法律制定(国際的基準を遵守して)と専門作業部会(TWG-ジェンダーを含む)を通じた政府開発パートナーの協力、共同監視指針、市民団体・NGOの参加と協力活動はジェンダー主流化をさらに支援するメカニズムである。

これまでに述べたように国家開発戦略計画(NSDP)はジェンダー平等の考え方を組み入れ、ジェンダーに特有の指標を入れると同時に、全体の目標と戦略の指針を提供したが、プログラムの具体的な部門の戦略や順序、詳細を明らかにしていない。このことは、省庁や専門作業部会(TWG)に委ねられている。その結果、NSDPの発足以来、具体的なジェンダー主流化行動計画とともに部門別戦略の開発にあたって、ジェンダー主流化を支援する大きな努力が払われてきた。

NSDPの立案以来、国の政策やプログラム、部門別計画、コミューンの開発、投資計画立案、予算編成でジェンダー主流化を推進する努力が払われてきた。経済危機に対する政府の対応策には、緊急食料援助や国家社会的セーフティネット戦略の開発のような貧困削減のための具体的な施策が入れられた。またイニシアティブには特定の部門が含まれる:その中で女性に最も関係する部門には衣料品部門、観光、農業が含まれる。
衣料品工業にとって、こうしたものには、例えば、利益にかかる税金の1%の前払いの停止;解雇された労働者のための研修プログラムに対する特別の融資;衣料品や他の工業製品の市場の多様化が含まれる。

観光部門のためのイニシアティブには、観光市場や観光目的地を多様化すること、魅力的な観光パック旅行を作ること、ビザ発行料金の免除を考慮することが含まれる。農業部門のイニシアティブには種、肥料、農薬、農機具などの農業資材の輸入関税をゼロにすること、手続きの合理化、農業投資プロジェクトに対して3年間の免税期間を設けることが含まれる。また、競争と研修を推進する重要なイニシアティブが進行中である。その中には、農業、工業、手工芸、サービス業の約40,000人の労働者を訓練する短期の奨学金プログラム(650万USドル)と、国家雇用機関が運営する「自営業基金」を設立する計画が含まれる。その基金は労働者が小規模ビジネスを立ち上げるための訓練を受けるための援助として小規模融資を提供する。(100万USドル)

MOWAは関係省庁や機関と一緒に、カンボジア貿易行動計画に統合されるさまざまなジェンダーに敏感な施策を提唱する活動をしている:
● 貿易発展のための改革と分野を横断する問題
○ 経済特区の開発に結びつけられる安全な移住を保証する施策
○ 経済特区で施行される労働法
● 製品とサービス部門の輸出の発展
○ 特に女性に重要な産業に与えられる優先権(例えば、衣料品、はきもの、絹、食品加工、天然資源を元にした手工芸品)
● 貿易の発展と貿易発展の管理のための能力の樹立
○ 貿易推進サービスは、貿易に携わるほとんどの女性が直面する制約を認め、対応し(例えば、ジェンダーを基にした態度、教育、技能の制約)、女性の生殖上の役割によって定められた時間と場所の制約を認め尊重する方法で提供される。(例えば、村に基礎をおいた研修とサービス、研修と雇用に結びついたチャイルドケア・サービス)
○ ジェンダーに敏感な指標と目標は貿易部門の発展のための監視枠組みに統合された。
○ ジェンダーと貿易:女性の読み書き能力と教育のレベルが低いので、生計手段の選択や、貿易部門の発展と新しく生まれた経済的なチャンスから利益を得る可能性は制約される。そして、男性に対する伝統的社会的な期待は根強く持続し、一方で、社会が受け入れ得る役割を果たす機会はますます制約される。

農村では雇用の機会は拡大し、生産性は上昇している。
● 女性開発センター(WDC)
WDCは効果的な需要主導型の企業の発展支援をしている。(価値連鎖図に沿った発展、生産者グループ、技術研修、市場の連結、財政的なサービスへの連結など)センターは農村の女性に必要な多くのサービス、例えば、需要主導型企業の展開サービス、技術・職業・識字訓練プログラム、補足的な生活技術訓練を提供することができる。しかし、 
こうしたセンターのインフラや技術的な能力をもっと高める必要がある。
  ○ 国内および国際市場向けの製品を生産するために、企業発展支援は地方の技能や資源を基にして行われる。
  ○ 生活技術の訓練は企業発展サービスを補足する。
  ○ 女性開発センターのサービス提供を支援するMOWAの能力を強化すると、国家的及び準国家的なレベルでサービスを提供できる。

4.勧告

終わりに、将来の戦略とプログラムのために、女性と貧困撲滅行動計画のさらなる効率的な実施のために、女性の地位を向上させるために、社会のあらゆる分野でジェンダー差別を撤廃するために、私たちは以下のような勧告をしたい。

全体的な勧告:
公式の教育に投資をし、中学校、高等学校への入学や出席における不平等に取り組む。
ジェンダーに敏感な、幅広い層を基にした経済的エンパワーメントと社会的保護を構築する最も良い方法を明らかにし、現在行われている、ジェンダーの影響の分析を確実に行う。
ジェンダーに敏感な社会的保護と社会的サービスを拡充する。
経済的な主体、経済政策の対象として、女性の貢献を評価し、正当と認める。
政策策定の意志決定者に女性を含める。
現在行われている経済復興パッケージを知らせるための分析を含み、部門に特有のジェンダーの影響の監視を通じて、ジェンダーに敏感な予算編成を導入する。
女性と少女の法的な保護を保証する。
インフォーマル部門の支援を拡大する。

さらに適用範囲の広い勧告
ジェンダー主流化の改善
ジェンダーの問題は、国が直面する多くの開発の問題の根本にあることが示されてきた。これは、経済と教育の機会や保健サービスを利用し、意志決定のプロセスにもっと十分に参加する女性の能力と、移住、家庭内暴力、対峙しているさまざまな危険が及ばす悪い影響から女性を保護することに関係している。ジェンダーに強く焦点を当て続けることと具体的なジェンダーの戦略が、あらゆる部門の対応に組み入れられ、十分な資金を受ける必要がある。このような戦略の中心は、男性と女性の両方のために、行動の規範や法的な保護と権利について、活発に対話をすることである。

教育へのアクセス、教育の質と社会性
教育の分野ではめざましい進歩があるにもかかわらず、教育で取り組まれている主な難題は、依然として存在する小学校の入学の格差をなくすこと、低い純中学校入学率につながる小学校で規定年齢を越えた児童の割合が高いこと、低い卒業率、親とコミュニティの教育への参加の低さ、低い教育の質、教育の社会性の問題である。教育の社会性は、雇用と自営、特に農業ビジネスを支える生産的な技能を若者が獲得するための選択肢を広げるために特に重要である。

統治の改革と改革プログラムの実行
統治の改革は四辺形戦略とNSDPで取り組まれているが、CMDGsの枠組みで明確に取り組まれているわけではない。しかし、貧困の軽減に取り組むすべてのCMDGsで発展を遂げるのに重要な問題は、あらゆるレベルで統治の改善を実現することである。それは、計画立案と予算編成システムの統合と合理化を含み、国家と準国家のシステムを結合し、サービスを提供する際の市民サービスの能力と遂行能力を改善し、説明責任の向上を支援し、市民社会との建設的な対話を育て、組織化することである。また、意志決定の場に女性が参加することの奨励も含んでいる。

持続する、広い層に基盤を持った、公平な経済成長
貧困のレベルと不平等を軽減するにあたって、カンボジアが直面する最も重要な問題は、経済成長の高い割合を維持しなければならないことである。カンボジアは過去数年間、特に農村地域で多数の若者に雇用機会を提供してきた。現在彼らは労働力として働いている。しかしながら、こうした成長はもっと幅広い層に基盤を持ち、もっと持続可能で、もっと多様にならければならない。特に農業の潜在能力をさらに効果的に開発し、確実にさまざまな地域や階層の間でもっと公平に配分されるようにしなければならない。このために、生産的な雇用と人並みな労働、法的保護を生み出すことになるような農業、工業、サービス業への大規模で多様な投資を促進するための、投資情勢と政策の一貫性のマクロな問題に取り組むことが求められるだけではなく、農村の貧しい人々、とりわけ女性をエンパワーして、女性が多様な雇用の選択肢を利用し、女性自身の農業生産力を向上させ、土地保有の改善、天然資源の管理、災害に対する準備の面で、新しい選択肢を明確にして採用するようになることが求められる。

生産的なセーフティーネットの実施
女性であれ男性であれ、人口の大部分が世界的な経済危機の衝撃を受けて、大きな犠牲を払い、再び貧困に陥ったりさらに貧困に陥ったりたりする高い危険にさらされた。そしてそれに伴って生産財は壊滅的な損失を被った。重要な問題は、それ故に、ジェンダーに敏感で、一貫性があり、ダイナミックで、的を絞った、持続可能なセーフティーネットを設計し、実施することである。そうしたセーフティーネットは飢えの問題に取り組み、貧困層、とりわけ女性を経済的な衝撃、将来の逆転、病気の過酷な結果から守るだけでなく、起業を奨励し、女性にも男性にも力をつけさせ、リスクを引き受け、自分たちの生活や所得を生み出す機会を向上させることになるのである。


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 中 国

シュウ・フアン
国務院女性・子どもに関する作業委員会課長

貧困の根絶、調和のとれた発展の追求、全国民共有の繁栄は、中国政府の揺るぎない目標である。貧困の削減を迅速に進めるため、中国はいつも農村地区の貧困の撲滅を国の経済的社会的発展の優先項目にしてきた。そして貧困緩和、都市と農村の統合などを達成目標に、構造改革、経済開発のためのさまざまなイニシアチブを通じてその過程を前進させる努力をしてきた。

女性は貧困の犠牲者であると同時に貧困根絶における重要な戦力である。長年にわたり、中国政府は女性の間の貧困の問題に大きな重要性を付与し、貧困女性のために有利な政策をとり、ジェンダー認識を貧困削減の国家総合計画の中に組み込んできた。こうした全ての努力により、中国における女性の貧困緩和は注目すべき成果を上げてきた。

中国における貧困削減の基本的現状

中国政府による貧困ラインによると、中国農村部の、まだ適切な衣食を得られない絶対貧困層の数は、1978年の2億5千万人(農村総人口の30.7%)から1990年の8,500万(9.6%)、更に2007年には1,479万(1.6%)に減少した。中国はミレニアム開発目標(MDGs)の第一目標「極度な貧困と飢餓の根絶」を、提唱された締め切り期限前に達成した最初の発展途上国である。MDGsが採用した、一日1USドルという共通国際貧困ラインで測ると、貧困生活を送る中国農村人口の割合は1990年46%から2005年10.4%に減少し、これもMDG目標(収入が一日一ドル以下の人々の割合を半減する)を期限前に達成している。

中国は貧困撲滅の過程で常に男女平等に特別な注意を払っている。教育水準の低さ、不適切な資金、不十分な実際的技能、情報サービスの未開発のような、貧困におちいった女性の隘路となる問題点はうまく解決され、貧困女性の数も顕著に減少してきた。中国の貧困削減の非常に重要な一部分である女性の間の貧困の緩和は、過去30年にわたって大いに希望の持てる改善を示している。

中国はまた、国際開発援助を提供し、貧困削減の経験を交換し、国際協力を促進し、またその他のかたちで他の発展途上国や地域に支援を提供して、国境を越えて世界的貧困削減に積極的に参加してきた。

 

II. 女性の間の貧困削減における中国の実践
1. 優遇政策
女性の間に存在する貧困とより効果的に闘いそのペースを速めるため、中国政府は女性に有利な政策を策定してきた。政府によって制定された「中国女性の発展のための国家計画(2001-2010)」は、「女性の間の貧困のレベルと量を軽減する」ことを目的とし、女性の収入増加と貧困撲滅に関連する政策と方策を求め、農村女性のための技術研修の組織化と余剰労働力の非農業分野への移出を要請した。2004年シンガポールで開催された貧困削減世界会議では、貧困緩和プログラムへの女性の参加を促進するため、男性と同じ状況下の女性には優先権が与えられるべきだとの意見が中国政府から提出され、このようなプログラムでは少なくとも40%を女性が占めるべきだと提案された。
 
2.小規模金融プログラムの導入
1980年代半ば、バングラデシュのGBモジュールから得られた経験をもとに中国は、女性の貧困からの脱出を農村部での小規模融資によって援助する道を探り、中国農村部において効果的に貧困削減をもたらした。その後、この経験は1990年代後半都市部においてさらなる発展を遂げた。1998年UNDP(国連開発計画)とAUSAID(オーストラリア国際開発庁)の財政支援を受けて、天津市女性連盟は、解雇された女性労働者のための再雇用とビジネス・ベンチャーのプロジェクトを実施し、なかなか良い成果を上げた。小規模融金融は次第に、都市部の解雇された、または非雇用の女性が、再雇用されたりまたは自分の事業を始めるための効果的なルートとなってきている。

2009年から、女性の雇用と起業に対する小規模金融を通じての支援は、新たな発展を見せている。四つの関連政府部局と女性組織、つまり中国人民銀行、財務省、人的資源と社会保障省、そして全中国女性連盟とをつなぐメカニズムがつくられ、全中国女性連盟はこのメカニズムの総コーディネーターの役割を果たしている。女性とりわけ農村女性が小規模金融政策によって確実に利益を受けるよう、またその雇用と起業が容易になるよう、ローンの増額、適用ルートの拡張、簡素化された認可手続きなどを含む有利な政策が規定されている。

新たに発展した小規模金融政策は、主に3つの側面で飛躍的な進歩を遂げた。第一に、女性に交付される小規模クレジットの額は50,000人民元(RMB)から80,000RMBにと改善されており、適格なローン対象への一人あたり最高額は100,000元まで増加できる。第二に、小規模クレジットの適用範囲が更に拡大、非雇用もしくは仕事がなかなか見つからない都市部・農村部の女性までカバーしている。申請は自主参加の原則に則っている。第三に、小規模クレジットの交付を実際に行うため、複数部門によるメカニズムが設定されている。その中では女性連盟が基本的な役割を担っている。女性連盟の持つ利点、つまり省、直轄市、県、郷、村の五階層での組織体系、小規模金融での豊富な経験、女性のための草の根トレーニングネットワーク、などが小規模金融の課題を確実に成功裏にやり遂げるために十分に活用されている。
3.貧困と闘う女性の能力を高めるための教育と訓練の提供
貧困に苦しむ女性の文化的科学的レベルを向上し、実用的スキルをのばし、貧困削減における科学と技術の役割を増し、長期にわたる効果を実現するという観点から、中国政府の財政、教育、農業各部局および女性連盟など七つの異なる部門が一緒になって、農村女性の教育と研修の発展に関する文書を発表した。さまざまな種類の研修プログラムで女性の参加者は40%以下であってはならないということがはっきり明記された。

農村女性とりわけ中部・西部の貧困地域の女性に、文化や科学と技術、実用的な情報とスキル、ジェンダー認識と政治参加、暴力との闘い、その他のトレーニングを提供することを目的として、女性連盟はさまざまなレベルで150,000の農村女性のための学校を開設した。これによって女性の全体的能力は発展し、権利と参加の意識の度合いは明らかに強化され、生活水準も同様に向上している。

一方、極貧家庭や地域からの学生達は義務教育の期間、授業料その他の免除と生活費補助という優遇政策を享受する優先権を得ている。この政策は女子学生に対しては更に特恵的で、それは彼女たちの教育へのアクセスを保証して、極貧地域の女性たちの脆弱な立場を変えるという長期目標を達成するためである。

4.女性の貧困削減の質を向上させるための、組織体系の改善
女性連盟は、農村女性が自らの熟練者経済協同組合を設立しそれを通じて貧困から脱出するよう支援する方法を探索してきた。連盟は、農産物協会や熟練者協同組合の構築に主導的役割を果たすよう、有能な農村女性を励ました。そうした組織は他の女性達の間の結合力の役を果たし、貧しい農村女性を組織するシステムを改善することが出来る。現在までに中国各地で36,000の熟練者協同組合が設立され、有能な女性たちの主導的役割を十分に発揮させるこうしたやり方は、中国農村部の女性達の貧困削減への効果的な推進力となっている。

5.さまざまなルートを通じての女性余剰労働者の移動
中国女性連盟は、研修と雇用を通じての女性余剰労働者の移動によって、貧困に苦しむ地域の女性の人的資源の開発を活発に進めてきた。労働移動の拠点と雇用市が入念に組織されて、情報サービスと雇用ガイダンスを提供し、職の提供者と求職者の双方にとっての足がかりをつくり、貧困女性を雇用に導こうとしている。連盟はまた、女性手工芸品商工会議所と編み物織物協会の規模を拡大している。これにより加工品プロジェクトを発展させ、女性が仕事のチャンスを増やし移住のない労働移動を実現することが出来ると期待される。現在のところ、中国全域の46,000の村と集落が加工と工芸品のプロジェクトを遂行中で、それにより300万以上の女性が自分の居住地での雇用を得ている。この女性達は収入を増やし、同時に畑で働き十分に老人やこどものめんどうを見ることが出来るだろう。
6.極貧地区での女性と子どものケアのための社会全体の動員
中国政府の支援のもと、各社会勢力と資源が一体化され、女性と子どものための貧困削減を支えている。関連公共福祉プログラムが何年にもわたって継続的に実行され、貧しい女性と子どものための基礎的生活環境改善に肯定的役割を果たしている。

2000年から2007年の間に全中国女性連盟によって行われた「母親のための水貯蔵庫(ウォーター・セラー)」と呼ばれるプロジェクトは1億9千万RMBの特別基金を集め、中国西部干ばつ地帯の140万近い女性がきれいな飲み水の入手困難という問題を解決するのを援助した。2003年以来、全中国女性連盟は極貧地域―そのほとんどは中国西部にある―に561台の「母親のための健康特急」と呼ばれる車を送り、貧困女性に健康に関する知識とサービスを提供している。ほぼ874万人に達する女性がこのプログラムによる利益を享受してきた。また2000年から、中国貧困削減基金が「母子安全活動」プログラムを開始した。このプログラムは、貧困家庭の母親と乳幼児に補助金や支援物資を供給し、対象地域の医療機関に基礎的設備を備え、地域の医療関係者のトレーニングを行い、貧しい母子の健康レベルを改善して彼らが健康の問題によって貧困に逆戻りしないようにすることを目的としている。更に、1989年から、落ちこぼれの少女達の復学を手伝うために同連盟によって「春の蕾(スプリング・バッド)プロジェクトが実施されている。2007年の終わりまでに、6億RMB以上が集められ、それによって600以上の「春の蕾」学校がつくられ170万以上の貧困家庭の少女達が復学のための財政支援を受けてきた。

上記のこうしたプログラムの全てが、貧困地域の女性と子どもの生活状況を向上させ、彼らの貧困を削減する速度を速めるのに肯定的役割を果たしてきた。

III.  現存する問題 

貧困緩和における中国のすばらしく大きな成果にもかかわらず、MDG目標とのあいだにはまだいくらかの潜在的ギャップがある。

第一に、貧困率は実質的に下降したものの、中国にはまだ数多くの貧しい人々が存在する。2008年10月、中国の経済的社会的発展のあらたな要求に応えるため、中央政府は農村地域の貧困削減を更に押し進めること、新しい貧困基準を適用することを提案した。その基準では絶対的貧困と相対的貧困との間に現在置かれている違いは廃止され、中国の貧困人口は現在の1,479万から4,300万に上昇することになる。従って、中国はいまだに貧困削減の面での困難な課題を突きつけられている。

第二に、貧困がまだ深く浸透している地域、人々がある。困難な自然状況、未開発のインフラ、不適切な公共サービスに悩まされている地方が存在する。
更に、貧困削減はいまだに比較的脆弱である。統計によると貧困地域の自然災害のリスクは全国平均の5倍で、これが示すのは、経済的、社会的、そして自然のリスクがしばしば一体となって残存の貧困層を襲い多くの困難を引き起こしうるという難題である。貧困の構造もまた常に一定したものではなく有意の変動を見せ、毎年多数の人々が貧困に陥ったり抜け出たりしている。慢性的貧困より一時的貧困のほうが一般的であるように思われる。

最後に、中国ではいまだに貧困削減の分野において信頼に足る要素別のデータが不足しており、女性の間の貧困削減のさらなる進展に、ある程度の障害となっている。

IV.  今後の行動方針

ジェンダー認識を向上させ、ジェンダー主流化を推進し、政府のさまざまな部門による貧困削減政策、計画、プログラムにジェンダー平等の視点を組み込むよう求める。
女性をターゲットとした貧困削減プログラムを実行するため、特別政策を策定し特定の対応策をとる。
積極的にグローバルな貧困削減に参加し、経験を交換し、国際協調を強化し続ける。

 インドネシア

◇はじめに
インドネシアは世界で4番目に人口が多い国として、人的資源の開発によって経済は成長し、国民の福祉も向上することをよく理解している。経済成長の要因として経済開発とともに人的資源の強化も必要であるので、人的資源の開発によって持続可能な開発の強い基盤はさらに強くなる可能性がある。また、民主主義と正義も人的資源の開発を通じて達成できるかもしれない。さらに、国の財産として人的資源を開発すれば生産性も向上するだろう。それゆえに、インドネシアは、Program Nasional Pemberdayaan Masyrakat Mandiri (PNPM Mandiri)と呼ばれる国民のエンパワーメントに関する国家プログラムを設立した。

インドネシアは折あるごとに、貧困を緩和する有効で効率的なプログラムを常に開発する努力をしてきた。1998年、経済危機が世界を襲ったとき、インドネシアは救済・回復プログラムを開発して貧困と闘った。救済プログラムはJaring Pengaman Sosialという社会的セーフティネットプログラムで、もっとも深刻な影響を直接受けた社会グループの社会経済的状況を解決する当面の的確な戦略を提供することが目的である。一方、回復プログラムは当時の大きな貧困問題に取り組むだけでなく、かなり長期間続く可能性がある経済危機の影響を未然に防ぐことを目的としている。

その時以来、インドネシア政府は回復プログラムを展開してきた。それは現在もまだ進行中である。アプローチの方法は調和と協働を通じて貧困の緩和に関するプログラムの効率をもっと上げようというものである。その結果、強く統合された調整が必要になる。
それは、行為者や利害関係者の間で実施の際の計画作りや共同作業をしている間に、いくつかのプログラムが同時進行していることを意味している。

PNPM Mandiriは、貧困層を自立(Mandiri)させるだけでなく、悪循環から引き上げ、彼らの能力と自信を高める全体的・包括的アプローチである。このアプローチは3段階で実施される。第1段階では、極貧のコミュニティーが実用的なことについて基本的な援助を受ける。つまり、研修を受け、技能をつける。第2段階では、貧困コミュニティーが活動を始める。例えば、小規模ビジネスである。質の高い商品を生産する能力をみがけば、自信がつき、自分自身を表現できるようになる。すなわち力をつけることができる。第3段階では、貧困コミュニティーは自分たちの知的能力を高めことができて、金融機関の信用貸しのような他の財源を使う資格ができる。

2007年以降、PNPM Mandiriは貧困緩和国家調整チームを通じて、貧困緩和のあらゆる試みを上記のアプローチに似た3群にまとめた。それは、社会的援助と保護、コミュニティーのエンパワーメント、零細ビジネス・小規模ビジネスのエンパワーメントである。そのプログラムはいくつかのプログラムに発展した。例えば、学校経営援助(Bantuan Operasional Sekolah- BOS)、石油価格上昇時に貧困者のための無条件現金給付、貧困者が医療サービスと教育を受けるための条件付き現金給付、貧困者用健康保険、貧困者用米の補助金、そして、最後になったが特に、Program Keluarga Harapan- PKHという、貧困層の妊娠した女性の健康とその子どもの教育に関係するプログラムがある。これについては次章で、詳しく述べることにする。

女性に対する暴力やジェンダーに基づく暴力は個人や家族でも、コミュニティーでも、頻繁に起きている。公的な場ですらも起きている。2002年以降、Komnas Perempuan (女性のための全国委員会)は女性に対する暴力とその進行または後退に関する年報を出版してきた。2006年に統計局(Badan Pusat Statistik-BPS)は女性エンパワーメント国務省と共同で、約227万人の女性が暴力を経験し、そのうち主に精神的暴力が65.3%、身体的暴力は23.3%であることを明らかにした。家庭における暴力撤廃法が施行されたが、女性と子どもに対する暴力は依然として起こっている。性的搾取のための女性と子どもの人身売買は依然として起きており、国の重要な問題になっている。また、人身売買は社会の中に文化と物質偏重主義が存在するのでさらに複雑になり、その結果、家族や隣人、友人、配偶者さえも女性と子どもの人身売買を企てるようになった。2005年3月から2009年6月までの総被害者数は3,476人で、そのうち3,113人が女性(ほぼ90%)である。国外への人身売買はさらに多くなり、81%以上である。

◇社会的セーフティネットPKH
PKHはすでに述べたように、最貧層が生活の質、とりわけ健康と教育の人間的な生活の質の改善に関係する要請をした場合に、直接現金を給付するプログラムである。PKHは貧困層の間に社会的セーフティネットを作ることを目ざしている。その中で最貧層は子どもに学校に行かせたり、健康診断を受けさせたりしていない。幼児や妊婦が栄養を取ったり予防注射を打ったりもしていない。

PKHは児童労働を減らすだけでなく、妊産婦死亡率(MMR)と幼児死亡率(IMR)を削減するために開発されている。MMRはインドネシアの出産100,000件あたり、307から228に低下したが、まだASEAN諸国のうちで最も高い。おわかりのように、貧困層の出産率はふつう高いが、死亡率も高い。その上、貧困層の暴力の発生率は極めて高い。従って、PKHは女性と子どもに対する暴力を減らすのに役立つ可能性がある。研究によれば、たいていの場合暴力は経済的な問題がある家庭、とりわけ夫が失業している家庭で発生することが多いとのことである。そのような貧困層の女性はふつう出費をまかなうことができなくて、家族のために稼ぎ手になることが多い。

PKHは次のような家族に的を絞っている;学齢の子ども(6才から15才)がいる家族、あるいは18才以下の子どもがいるが小学校を卒業していない家族。よちよち歩きの幼児がいる家族。母親が妊娠している家族。こうした家族の要求を満たすには母親と子どもの両方の健康診断をしたり、子どもを学校に行かせたりしなければならない。妊娠中の母親は少なくとも4回検診を受け、鉄剤をもらい、看護婦や助産婦の支援を受け、産後は少なくとも2回健康と母乳保育プログラムに参加しなければならない。幼児は予防注射を接種し、ビタミン剤をもらい、学齢になるまで成長をチェックしなければならない。6才から17才の子どもの教育に関しては一年の85%、学校に出席する必要がある。15才以上であるが学校を卒業していない子どもは補習校や同等のレベルの学校に通学しなければならない。

直接現金支給は最貧家庭の母親に3ヶ月ごとに行われる。お金を使うのに決まった義務はない。母親自身の判断にかかっている。各家庭で受け取るお金は、平均139万ルピア(約139US$)、最低60万ルピアから最高220万ルピアである。

プログラムを管理しているのは、プログラムの調整役として国民福祉調整省、プログラムの計画立案と資金集めに国家開発計画局、担当省庁として社会福祉省、保健医療を提供する保健省、BOAサービスと提供者として教育省、地方政府の調整役として内務省、基金調達役としてPT Pos(郵便局)である。

◇ケーススタディ、シンカワン市
PNPM Mandiriはインドネシア全域で実施されてきたが、その中でシンカワン市は紹介したいと思う地域の一つである。というのは、暴力と人身売買が異常によく起きるが、貧困緩和も効果を上げているからである。PNPMのもとでシンカワンのどの小区域も政府補助金を受けている。シンカワンのほとんどの地区は、貧困と暴力の発生数が高いので基本的な援助を受けている。中国人地区は貧困と暴力の発生数が特に高い。PNPMのもとで女性は20%の政府補助金を貯める計画を立てることができるが、補助金について決定する時にコミュニティーに影響を及ぼすことができるかどうかは、実際には女性たちの能力次第である。多くの場合、女性は集会に参加せず、補助金を使う機会も逃している。

貧困は暴力や人身売買を生み、女性と子どもに影響を及ぼすことが多い。もっとも共通する問題は花嫁メール・オーダーを通じた人身売買で、それは女性や子どもの教育と健康の欠如、公的な場への女性の参加の低さに関係する。さらに、人身売買は性的虐待、強姦、身体的虐待、人身売買の被害者、売春のような他の種類の人権の侵害を生む。さらに悪いことには、HIV/AIDSや麻薬の乱用も、貧困層に特有なものである。身体障害者については言うまでもない。

PNPMやPKHなどのプログラムがシンカワンで行われるようになって、徐々に地域が暮らしやすく変化している。シンカワンの人的開発指標(HDI)は、2006年には65.46だったのが2007年には67.61に改善された。2007年シンカワンのHDIは西カリマンタン州の平均より高い点数になった。貧困層の数は2007年16790人から2008年16412人まで徐々に減った。

女性のエンパワーメントは生活の人間的な質を高める一つの戦略で政策である。女性エンパワーメント・家族計画局の設立はジェンダー問題の発展と認識に影響を及ぼした。女性は収入を生み出すプログラムで研修を受け、まだ働ける高齢者は何らかの活動や収入を生むプロジェクトで依然として働いている。また、若者のための非公式な教育も行われている。

結果として、女性は自分たちを組織し始めている。彼女たちは問題に直面する用意ができており、自分たちの問題を解決しようとしている。女性と子どもに対するエンパワーメントとサービスについての統合されたプログラムは、必要ならば、女性と子どもにガイダンスを受けさせ、シェルターを提供できるように設立された。もっともすばらしいのは、女性は警察や担当官に虐待や暴力について届け出ることができるくらい勇敢であることだ。

 日 本


仲程 倫由
内閣府男女共同参画局推進課長

1 はじめに                    
配偶者からの暴力の問題を中心に、現在の日本における女性に対する暴力の状況とそれに対する取組について説明いたします。

2 女性に対する暴力
配偶者からの暴力をはじめとする、性犯罪、売買春・人身取引、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為等の女性に対する暴力は、女性の人権を著しく侵害するものであり、男女共同参画社会の実現を形成していく上で克服すべき重要な課題です。

3 配偶者からの被害経験―1※
内閣府では、平成20年に、配偶者からの暴力の経験についてアンケート調査を行いました。身体的暴行、心理的攻撃、性的行為の強要のいずれか一つでも受けた経験があるか聞いたところ、女性の約1割が何度もあったと回答しました。また、被害経験が1,2度あった人を含めると、何らかの被害経験があるという人は、女性の約3分の1でした。

4 配偶者からの被害経験―2
また、配偶者から何らかの被害を受けたことのある人に対し、命の危険を感じた経験があるか聞いたところ、女性の1割以上が命の危険を感じた経験があると回答しました。

5 配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数の推移
配偶者暴力に関する相談窓口である配偶者暴力相談支援センターが全国に約180箇所ありますが、支援センターにおける相談件数は毎年増加しています。平成20年度の相談件数は、6万8千件以上に上りました。

6 警察における暴力相談等の認知状況
警察において、配偶者からの暴力に関する相談や、検挙等により、配偶者からの暴力事案を認知した件数も毎年増加しており、平成20年は2万5千件を超えています。

7 婦人相談所における一時保護された女性の人数
配偶者暴力の被害者や人身取引等の被害者の一時保護を行う施設として、全国に婦人相談所があります。夫からの暴力を理由として保護を求めてきた数は、平成19年度は4,500人以上で、全体の7割以上を占めています。
8 配偶者暴力防止法に基づく保護命令の処理状況
配偶者暴力防止法において、被害者の申立により、裁判所が配偶者に対して、被害者に接近することを禁止したり、住居から立ち退くことを命じたりすることのできる保護命令という制度があります。
  保護命令の申立件数は年々増加しており、平成20年は、2,500件を超える保護命令が出されています。

9 配偶者間(内縁を含む)における暴力の検挙件数と被害者の性別
配偶者間における暴力の検挙件数と被害者の件数を見ますと、殺人については男性の被害も多いのですが、傷害・暴行においては9割以上が女性の被害となっています。

10 夫から妻への犯罪の検挙状況
夫から妻への犯罪の検挙件数の推移を見てみますと、暴行事件、傷害事件が増加傾向にあります。特に顕著に増えているのは暴行事件です。

11 強姦・強制わいせつ認知件数の推移
強制わいせつ、強姦は、平成16年以降、いずれも減少傾向にありますが、依然として9千件近く発生しています。

12 都道府県労働局雇用均等室に寄せられたセクシュアル・ハラスメントの相談件数
職場における女性に対する暴力であるセクシュアル・ハラスメントについては、都道府県労働局雇用均等室に寄せられる相談件数は年々増加しています。平成19年に男女雇用機会均等法が改正され、職場における男性に対するセクシュアル・ハラスメントも法律の対象となりましたが、平成19年度においても、労働者からの相談は、ほとんどが女性労働者からのものです。

  ここまで女性に対する暴力の状況を見てまいりましたが、次に、女性に対する暴力に関する取組について御説明いたします。

13 女性に対する暴力をなくす運動
女性に対する暴力全般について、国民の意識を高め、関係機関の連携を図るため、男女共同参画推進本部は、毎年、国連が定める「女性に対する暴力撤廃国際日」を最終日とする11月の2週間、「女性に対する暴力をなくす運動」を行っています。期間中、地方公共団体や女性団体などと連携、協力しながら、女性に対する暴力に関する意識啓発等に取り組んでいます。

14 女性に対する暴力をなくす運動〜内閣府の取組〜
内閣府では、女性に対する暴力の防止のためのポスターやリーフレットを作成したり、この問題に関して、様々なメディアで取り上げてもらうよう取り組んでいます。
また、配偶者暴力の被害者への支援活動を行っている民間団体の協力により、運動期間中の11月17日から19日までの3日間、午前9時から午後9時までの間、配偶者からの暴力に関するDV相談窓口を開設したりしています。

15 配偶者暴力防止法の概要−1
配偶者暴力への取組については、平成13年に成立した配偶者暴力防止法が非常に大きな役割を果たしています。
この法律により、全国に配偶者暴力相談支援センターが配置されました。支援センターは、相談、カウンセリング、被害者等の一時保護、自立支援等に関する情報提供、助言、関係機関との連絡調整といった機能を持つものです。支援センターは、現在、都道府県に168機関、市町村に14機関配置されています。
  また、被害者の安全確保のための制度として、保護命令という制度が定められています。これは、被害者の申立により、裁判所が配偶者に対し、被害者への接近の禁止や住居からの退去などを命じるものです。2度の法改正により保護命令が拡充され、身体に対する暴力だけでなく、生命・身体に対する脅迫を受けた場合も命令の対象となりました。また、被害者への電話やメール等の禁止、被害者の子どもや親族等への接近禁止が設けられました。

16 配偶者暴力防止法の概要―2
被害者を支援するため、配偶者暴力相談支援センター、警察、民間シェルター、福祉・医療関係機関等、様々な機関が連携を図ることとされています。
  
17 基本方針
配偶者暴力防止法に基づいて、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針」というものを策定しています。この基本方針は、都道府県、市町村で策定する基本計画の指針となるものです。
  平成19年の法改正を踏まえて基本方針も改定され、都道府県、市町村の役割の明確化が盛り込まれました。都道府県は被害者の支援における中核的な役割を果たし、市町村は被害者に身近な行政主体として窓口の役割を果たすことが期待されています。
また、基本方針には、先駆的な都道府県・市町村における好事例を、望ましい取組として提示しています。

18 配偶者等からの暴力対策の充実強化
関係府省では、配偶者暴力防止法に基づく基本方針に沿って、配偶者暴力対策の充実強化に努めています。
内閣府においては、配偶者暴力防止と被害者支援に関する官民連携を推進するため、官民の担当者が一堂に会し、先進的好事例や情報を共有する「DV全国会議」を開催しました。
  また、配偶者暴力についてどこに相談したらよいのかわからないという被害者のために、最寄りの相談窓口を案内する「DV相談ナビ」という全国共通ダイヤルを開設しました。
  被害者の自立支援としては、民間団体と連携し、地域において生活している被害者とその子どもを支援するためのプログラムを作成、試行し、全国に普及させるモデル事業を実施しています。
 さらに、暴力の発生を未然に防ぐため、女性に対する暴力の加害者及び被害者となることを防止する観点から、若年層を対象とした予防啓発に関する教材を作成・配布することとしています。
  その他にも、関係省庁において、様々な取組がなされています。

19 人身取引対策
人身取引の問題については、総合的な行動計画を策定し、関係省庁が連携して、人身取引の防止及び被害者保護の取組を推進しています。関係法令による取締まりの強化や、適切な運用を図ったり、婦人相談所で保護した被害者への医療費を補助する等の保護の充実、また、安全な帰国及び社会復帰への支援などに取り組んでおります。内閣府においても、女性に対する暴力をなくしていく観点から、人身取引の根絶に向けて、ポスター及びリーフレットを作成し、国民一般に対し、広報啓発活動を行っています。

20 今後
今後も、これらの諸施策の一層の充実に努め、女性に対する暴力の根絶に向けて取り組んでまいりたいと思っています。


鹿取 克章
外務省ASEAN担当政府代表

本日は、女性と貧困の問題の重要性についての認識を踏まえ、国際社会における我が国の取り組みについて申し上げます。

はじめに、女性と貧困を含む様々な問題に苦しむ人間一人ひとりの生存、生活及び尊厳の確保を目指すことは何よりも重要です。このような考えから、我が国は、人間一人ひとりに焦点を当て、その保護と能力強化により、各人が尊厳ある生命を全うできるような社会づくりを目指す人間の安全保障(Human Security)の理念を重視しています。

我が国はこの人間の安全保障の理念の下、二国間援助や、我が国が国連に設置した人間の安全保障基金(United Nations Trust Fund for Human Security)」など国際機関を通じた支援により、国際社会において女性と貧困の問題に積極的に取り組んでいます。

我が国は従来、女性の教育、健康、社会活動への参加の3つの分野に重点的に取り組んできましたが、2005年に策定した「GAD(ジェンダーと開発)イニシアティブ」では、これらの3分野に限らずあらゆる分野において、ジェンダーの視点を反映していくことを重視しています。ODAの政策立案、計画、実施、評価のすべての過程を通じて、ジェンダーの視点を踏まえて活動を行うこと、いわゆる「ジェンダー主流化」を図ることで、開発途上国における男女間の不平等や、女性のおかれた不利な経済社会状況、固定的な男女間の性別役割・分業を改善することを目指しています。
ASEAN+3域内においても、GADイニシアティブに基づき、我が国は、女性問題の解決に資する多くの開発援助プロジェクトを実施しています。ここでは、ASEAN+3諸国の複数の国にまたがって実施中乃至実施済のプロジェクトの事例をいくつか紹介します。

我が国がUNDP内に設置したUNDP/日本パートナーシップ基金は、東南アジア地域において、女性及び女児のHIV感染と人身取引に対する脆弱性の削減に向けた環境整備のためのプロジェクトを支援しています。東南アジアでは、HIVの蔓延と人身取引の関連性について、科学的知見に基づいた分析がこれまで行われていませんでした。当プロジェクトでは、HIV感染と人身取引の根絶を目指して、政策、法的枠組み、社会的環境を整え、地域・国・コミュニティレベルで科学的知見に基づいた総合的な対応ができるよう支援を行っています。

我が国は、国連機関、NGO、学術機関と協力し、カンボジア、タイ、インドネシアで人身取引犠牲者のHIV感染率、感染の危険要因、健康状況に関するデータ、HIV・人口移動・性産業との関連性についての情報を収集・分析しています。その結果は、本年末までに地域会合や国際会議を通じて広く普及していく予定です。

また、我が国は、人間の安全保障基金を通じて、国際労働機関(ILO)が実施した「カンボジアおよびベトナムにおける児童および女性の人身売買のコミュニティ・レベルでの防止」プロジェクトを支援しました。本プロジェクトは2003年8月から2006年10月にかけて実施され、子どもと女性の人身売買が深刻な問題の一つとなっているカンボジアおよびベトナム両国の計7地域を対象に、コミュニティで子どもと女性の人身売買を予防するための住民参加型の取組を導入しました。コミュニティ全体としての予防能力を強化することを目的として、人身売買の危険性や予防に関する啓蒙活動、食料確保と所得創出のための技能訓練を通じて、人身売買の危機にさらされている家庭の支援などを行いました。

 この関連で、タイ女性基金が人身売買による女性の被害者の権利強化に関する事業を実施されていることを紹介させていただきます。この事業はジェンダー問題の解決に向けて重要な貢献を果たすことができると考えます。タイ女性基金の代表が出席されているこの機会に、同基金に対し心から敬意を表したいと思います。

次にASEAN+3域外での協力についてもいくつかの事例を紹介します。

農村人口や農業就業人口の半数以上は女性で、食料の3分の2の生産は女性の手によるものと言われています。しかしながら女性は土地の所有権や相続権がない、体力的な負担が大きい、市場についての情報が少ないといった多くの不利な点を抱えています。そのため、農業・農村開発支援においてはジェンダーの観点から計画を立案することが不可欠と言えます。このような観点から、我が国が2007年に実施したタンザニアにおける農業技術研修においては、参加者の男女比率を1対1とするよう配慮し、女性の労働負担の軽減、男性に対する女性の負担及び貢献・能力について理解を深めるよう努めました。

また、北部ガーナでは、シアバターと呼ばれる現地特産のバターが現地女性にとって重要な収入源となっています。我が国は、2007年から2年間、「北部ガーナにおけるシアバター産業支援を通じた現地女性のエンパワーメントと貧困削減」事業を実施し、非識字者向けのシアバター製造マニュアルの作成、マーケティング促進支援を行いました。

 以上のいくつかの事例で示されたとおり、貧困下の女性を支援する方法は様々です。これまで各国からも様々な視点で報告が行われました。それらを踏まえ、この後の政策提言作成では、ASEAN+3域内において最も適切な具体的対応策は何かを検討して頂ければと考えます。

 東アジア地域では、この10年来、域内貿易が約3倍の伸びをみせ、これに伴い、各国間の人の往来やモノの往来も大幅に増加しています。こうした域内における相互依存が進展する中で、女性と貧困の問題は、もはや他国の問題ではなく我々自身の問題です。
 こうして東アジアの各国から専門家の皆様が集結しました。我々の知恵を結集すれば解決されない問題はないと考えます。大事なことは解決するという強い意志と行動です。

 本日とりまとめられる提言が各国政策当局に有益なものとなり、女性と貧困の問題の解決に少しでも貢献することを心から希望します。

 韓 国

リー・ソ・リエ
外交通商部三等書記官 

世界の貧困女性の状況の概観

最近の研究によると、世界の貧困層の70%は女性で、10億人以上の人々が絶対的貧困の状況で生活しているとのことである。UNICEFの詳しい統計によれば、女性は世界の労働人口の3分の2を占めているが、収入は10分の1にすぎず、所有資産は世界の資産の1%以下であるとのことである。このように、女性は世界の貧困の重すぎる重荷を背負い、開発に明らかに貢献しているにもかかわらず、その利益から排除されていることが多いのである。

貧困の女性化によってさまざまなことが現れる。飢えと栄養失調、社会的差別と排除、健康不良、教育を受けられないことなどである。女性に対する貧困の影響は、経済不況、災害や紛争、意志決定プロセス・教育・研修への参加が限られていることのようなさまざまな要因によって悪化する。例えば、最近の世界的な金融危機によって、非常に多くの女性が、失業したり収入が無くなったりして、その結果貧困に陥るリスクが高くなった。

女性が資産の所有権を持ち、管理をすることができれば、教育を受けられる人は増え、家庭の収入や家計は増大し、健康は改善されることが認められている。このように、全体として貧困と闘うためには、ジェンダー平等に取り組まなければならない。女性のエンパワーメントを達成するとともに、経済政策や貧困削減政策にジェンダーの視点を組み込むことが絶対に必要である。ジェンダー平等を促進するために、貧困を緩和する手段として、家族サポートシステム、社会施設、セーフティーネットを強化しなければならない。1995年に採択された北京宣言・行動綱領は、貧しい女性のニーズに取り組むマクロ経済政策と開発戦略を検討し、採用し、維持するよう勧告していることを注目しなければならない。また、男女平等や女性の経済資産へのアクセスを保証するために法律や行政の慣行を変える必要があることを指摘している。

韓国の貧困女性の状況

貧困の程度や広がりは先進国と途上国では異なっているが、女性の貧困の状況はあらゆる国で起きている。韓国では女性の貧困は多くの場合、「相対的貧困」という概念で取り組まれている可能性がある。女性の貧困にはたくさんの背景がある。経済活動の低い割合、高齢化社会、韓国の労働市場での職業上の地位などである。離婚や死別といった結婚上の地位の変化も女性の貧困の原因になりがちである。

韓国の女性の貧困は、主に3つのカテゴリーに分けられる。1番目のカテゴリーは「ワーキングプア」である。「ワーキングプア」の階層は1997年の金融危機以降拡大し、女性はこの階層で大きな割合を占めている。「ワーキングプア」の中の女性の問題に取り組むには労働市場での女性の職業上の地位の改善だけでなく、女性の雇用の社会的差別を解決する必要がある。

2番目のカテゴリーは女性の世帯主である。韓国健康・社会問題研究所という首相官邸の管轄下にある国立研究所によれば、最低生活費以下で暮らしを維持している女性世帯主の貧困率は、可処分所得のレベルから判断して、2007年に18.6%だった。同じ条件のすべての世帯の貧困率は、2007年に10.9%だった。女性世帯主の数は増加し続け、1975年に12,800人だったのが2007年に19,900人になった。貧困女性の中の女性世帯主の割合も増加し、1975年の12.8%から2007年には19.9%になった。女性の世帯主は女性雇用に対する社会的な差別と女性のための教育や研修への参加が限られているために男性の世帯主よりもっと貧しいと思われる。

最後に、3番目のカテゴリーは、最低収入レベルで暮らしを維持している多くの高齢女性が占めている。2004年に保健福祉家族問題省が出した統計によれば、高齢女性の多くが421USドル以下の収入レベルで暮らしを維持していた。高齢女性の平均収入は314USドルで、高齢男性の824USドルより著しく低い。一般的に言えば、高齢女性の貧困は、女性の男性に対する経済的依存を強調する社会的文化的構造、ジェンダー間の労働の伝統的な分化と労働市場のジェンダー格差が原因である。

女性の貧困と取り組む韓国の政策と施策国家基本生活保障法である。この法律は1999年に制定され、2000年に施行された。この法律に従って、政府は最低生活費の暮らしを維持する世帯主に財政援助をしている。財政援助は生計、教育、医療、住居、リハビリのようなカテゴリーに分けられる。この法律は財政的な援助だけでなく、世帯主に職業訓練や、雇用の機会を提供することで生計を立てられるような援助もしている。国家基本生活保障法の全体の受益者の中で2003年には女性が全体の58.1%になった。2番目の施策は国家年金制度で、これは1988年に制定された社会的セーフティーネットである。この制度は高齢者、障害者、小規模事業所の雇用主を援助する。全国年金制度の受益者のうち女性の割合は2002年の32.5%から2004年の34.7%に増加した。さらに、一人親家庭支援法を通じて、政府は未婚の母親や離婚した母親に保育や教育の援助をしている。また政府は未婚の母親と子どもに自立するための援助をするだけでなく、保護しようともしている。女性の雇用のために政府は女性に職業訓練と雇用支援をしている。雇用のジェンダー平等を保証し、女性の経済的な参加を高めるために、育児休暇に対する一月の支給額は2001年の200USドルから2007年の500USドルに増額された。さらに出産後の女性の継続雇用の補助金が2006年に導入された。

国際レベル
国際社会の一員として、韓国は発展途上国のミレニアム開発目標(MDGs)の達成に熱心に努力している。韓国はジェンダー平等を開発援助の前提となる必須の構成要素だと認識しているが、韓国の政府開発援助(ODA)の歴史は比較的短く、韓国のODA政策とプログラムにジェンダーの視点を組み入れる議論はまだ進行中である。

2008年の政府の援助予算の約7%は、女性と環境のような多分野にまたがる問題に配分され、多くのジェンダー差別撤廃プロジェクトが育っている。韓国国際協力局(KOICA)を通じて、韓国はジェンダー平等と女性のエンパワーメントに特別に焦点を当てているプロジェクトを支援している。女性に貧困と闘う知識と手段を身につけさせるために、KOICAは途上国から多くの政府職員を招き、女性の権利、農村女性の能力開発、女性のエンパワーメント、女性と開発などの広い分野の問題について研修をしている。

特に、韓国はジェンダーに焦点をあてたさまざまな保健プロジェクトも支援している。MDGsの達成に向けた世界の進歩の年次評価を載せている2009年MDGs報告では、サハラ以南のアフリカと南アジアの妊産婦死亡率を削減する政治意志の強化の必要性が強調されている。この地域で全世界の妊産婦死亡の85%が起きているからである。国際社会の努力にもかかわらず、妊産婦の保健医療はほんのわずかしか改善されていない。韓国は妊産婦保健の現状についての懸念を共有して、二国間援助を提供している。また、ジェンダー差別撤廃健康プロジェクトに融資することによって多国間組織をも支援している。例えば、国連女性開発基金(UNIFEM)、国連人口基金(UNFPA)、国際家族計画連盟(IPPF)である。韓国はODAに組み込むジェンダーの視点を強化する努力をして、最も要望が強い人たちに援助を確実に届けていく。

女性の貧困と女性に対する暴力に関する法律的な施策

貧困は女性の人身売買、家庭内暴力、売春のような女性に対する暴力をもたらしたり、あるいはそうした暴力に影響を及ぼす可能性がある。女性に対する暴力を予防し、女性の権利をさらに確実に保護するために政府はさまざまな施策を実施した。とりわけ、政府は売春斡旋処罰法及び付随法と売春予防及び被害者保護法を2004年3月に制定し、2004年9月に施行した。この2つの法律は、売春の仲買人を厳しく取り締まり、被害者の権利を保護することで強制売春根絶に対する韓国政府の強い取り組みを具体的に表現している。その上、性的搾取の目的で行われる強制売春や人身売買を含む行為に対して厳罰を課している。また、こうした犯罪で得た利益の没収を明記し、犯罪の被害者に援助を与える。さらに、政府は1997年12月に家庭内暴力処罰特別法と家庭内暴力予防・被害者保護法を制定した。この2つの法律は別々に制定され、一方で家庭内暴力の加害者を処罰し、もう一方でこうした暴力の被害者を保護し支援する問題に、それぞれ限定して適用される。

同時に、韓国政府は女性に対する暴力と取り組むさまざまな関係者と協力してきた。例えば、政府は国際移住機関(IOM)ソウル事務所や強制売春の被害者を援助する他の国際組織と協力している。IOMの他に政府は、国連事務総長が始めた「女性に対する暴力ノー」キャンペーンに積極的に参加して、UNIFEMとの協力を強化してきた。

女性に対する暴力根絶についての韓国の優れた実践に関連して、政府は反売春政策のパラダイム転換を模索した。それは、1961年に制定された反売春法の理念だった、監督を強調する受動的で事後適用法の反売春法であったものから離れて、国民の意識に大変革をもたらすことによって問題の根本原因と闘う、もっと積極的なアプローチに転換することである。こうした目的のために、政府は売春斡旋処罰法及び付随法と売春予防及び被害者保護法を制定し、売春の予防に関する包括的計画を導入した。包括的計画を導入(2004年9月)して、政府は女性の被害者の権利を保護するために多方面にわたる努力をした。売春を「犯罪」とみなすのではなく、人権侵害の「被害者」だとみなしたり、加害者や売春斡旋業者に課される刑罰を強化したのである。売春予防及びその被害者保護法第3条に従って、政府は売春の予防に関する監視委員会を2004年11月に設置し、その後運営してきた。委員会はジェンダー平等省、司法省、保健福祉家族問題省、国家警察局を含む15の政府機関の長官レベルの役人で構成され、首相官邸政府政策担当副大臣とジェンダー平等省の副大臣が共同で、委員長を務める。委員会は他の関係する省庁と共同で、四半期ごとに売春の予防に関する包括的な計画の実施を監視する。売春斡旋処罰法及び付随法の制定で、政府は強制売春の被害者と元売春婦の両方に回復と独立の援助を改善するために医療、法律、職業の訓練の支援を拡大した。また、回復プログラムの効率を高めるためにシェルターや他の施設も拡張した。売春の被害者のための施設数は2004年6月の48から、2008年12月の100に増加した。売春被害者カウンセリングセンターでのカウンセリングの事例の数も2004年の26,424から2007年の33,925に増加した。

 ラオス

パバワン・ヌワンタシング
外務省ASEAN局課長

はじめに

ラオス人民民主共和国(Lao PDR)は、内陸の国で、メコン川流域地域に位置し、国境をベトナム、タイ、カンボジア、中国、ミャンマーの五カ国と接している。2005年の国勢調査によれば、ラオスの総人口は約562万人で、そのうち282万人が女性で、280万人が男性である。とりわけ、国民は若く、人口の50%は20才以下である。しかしながら、女性の人口282万人のうち、39%は0-14才で、57%は15-64才、約4%が65才以上である。

ラオス政府は常に、意志決定に女性の参加を増やすために一貫した政策を実行してきた。例えば、国民議会の女性議員の数は第1期国民議会の8.89%から第5期の22.93%、第6期の25%に増加した。全国の政府の役人は91,953人で、そのうち35,769人が女性で、38.9%にあたる。しかし、地方行政の女性議員は依然としてきわめて少ない。

経済と貧困の状況
ラオスの経済は主に農業を基盤とする経済である。GDPは2005年に491USドルである。2001年から2005年の間にラオスの経済は着実に成長した。GDPの成長率は年に約6.24%だった。一般に、採鉱、水力発電、農業・工業製品の輸出、サービス業への投資も上昇している。

ラオスの女性は経済部門で重要な役割を果たしている。女性は労働力全体の52%を占めている。女性は農業活動、所得の創出、小規模・中規模ビジネス、例えば、手工芸や国の収入に寄与しているラオス・シルクの生産に従事している。こうしたものはほとんど女性によって作り出され、女性自身で経営されている。それにもかかわらず、女性は依然として信用貸しやビジネス情報の利用を制限されている。女性はふつう一時的雇用や季節雇用に従事している。企業の女性労働の平均賃金は低い。教育と労働の技能のレベルが限られているせいで、農村地域の女性は雇用されるチャンスがいっそう少ない。

国家成長・貧困撲滅戦略の実施によって、ラオスの貧困は1992-1993の46%から1997-1998の39%、2002-2003の33.5%、2005年には28.7%と、徐々に減ってきた。2010年には23%に下がると予測されている。

2005年の国勢調査によれば、失業率は1995年の2.4%に比べて1.4%だった。2005年の平均寿命は女性が61-63才、男性が59才で、1995年には女性と男性がそれぞれ52才と50才だった。
現在、貧困に関してジェンダー別のデータはない。しかしながら、研究によれば女性は家族の食の安全や健康管理で男性より大きな役割を果たしているので、女性は常に男性よりもよく働くとのことである。貧困はほとんど農村や遠隔地で、とりわけ女性の間で見られる。2002-2003年ラオスの支出と消費に関する第3次調査(LECS 3)によると、農業では男性も女性もほとんど同等に時間を費やして働いていた。一日に女性は2.3時間働いていたが、男性は2.5時間だった。その上、女性は家事を2.6時間していたが男性はたった0.6時間だった。

ラオス政府は国家的な貧困との取り組み、特に農村地域の女性の貧困の撲滅に非常に注意を払ってきた。この問題は深刻に捉えられている。2005年の国勢調査によると、人口の27%が都市地域に住んでいるが、73%は農村地域に住んでいる。それ故に政府は、農村の開発と貧困撲滅に関する国家運営委員会の設立を決定した。包括的な農村開発に関する政策が国中で広く実施された。あらゆる県や郡にいくつかの指定された集中開発地域や地点があり、それらの多くは包括的農村開発のモデルになり、それぞれの村の経済的文化的中心になった。包括的開発プロジェクトは、15の県の39の郡で実施され、127村、9171世帯に及んだ。

貧困緩和基金も政府が設立し、世界銀行が執行機関となって、2003年に活動を始めた。基金は239の集中開発地域にある1913村を含む、5県の20郡で1212のプロジェクトを援助した。こうしたプロジェクトは女性の積極的な参加を奨励し、女性もそれなりに応じた。

2000年以降、政府は、アヘン栽培者に別の生計を立てる方法を提供する、アヘン栽培撲滅に関する14のプロジェクトを設置した。8つのアヘン中毒治療センターに加えて、政府はこうしたプロジェクトを通じて、人々に農業の知識や技術、家畜の飼育、手工芸に関する研修を行う努力をした。基金も商業目的での農業や手工芸の生産を促進し、奨励するために支援をした。基金が発展して、「コメ銀行と救急箱」も設立された。

教育の状況
女性の識字率は依然として男性より低い。男性の識字率は83%であるが、女性はたった63%である。女子の就学率も男子より低い。それには、家庭の貧困、子だくさん、無収入、年少の弟妹の世話や家事をさせるために少女を学校に行かせない伝統のような様々な理由がある。

上記のような状況から、政府は教育を国家成長・貧困撲滅戦略の最重要課題に掲げた。教育へのアクセスを改善し、女性、特に少数民族の女性の非識字率を削減する政策が採択された。国家の教育制度には公式・非公式の教育が含まれる。あらゆるレベルの教育管理システムは教育省の管轄下にある。

2003年に修正されたラオス憲法の第38条には「ラオスの国民は教育を受け、自分自身を高める権利がある」と書かれている。また第22条も次のように述べている。「国家は教育の開発に取り組み、革命的能力、知識、技量を持った良き国民を作るために義務教育を実施する。国家と社会は高い質の国家教育を開発し、全国のすべての国民、特に遠隔地や僻地の居住者、少数民族、女性、裕福な子どもに教育の機会と条件を創出する。国家は、国家の教育の開発に投資する民間部門を促進し、奨励して、国家のカリキュラム基準を遵守する私立学校の開校を認める。国家は国民と協力して少数民族居住地に教育を広める目的で教育を包括的に組織化するためにあらゆるレベルの学校を建設する」

ラオスの教育法第3条(2000年)には次のように書かれている。「すべてのラオス国民には、民族、人種、性、社会的身分にかかわりなく、教育の権利がある」。そして第5条には「教育を開発する際に、国は遠隔地に住む少数民族、女性、障害者、才能のある人々に注意を払う」と明記されている。

ラオス憲法、法律、国家社会経済計画、ミレニアム開発目標(MDGs)、すべての人のための教育(EFA)、国家成長・貧困撲滅戦略(NGPES)を実施するために、教育部門は以下のような2つの任務を持つ教育開発戦略を立ち上げた:
女性が教育を受けるために適した条件を作り出すこと。
知識と能力がある女性のための訓練コースを実施すること。

上記の2つの主な任務を達成するために、教育部門は以下の6つの目標を持つ、2005-2010年の評価を始めた。
学校の出席率を男子と同等にするために、女子の出席率を増やす。幼稚園の就園率は2005-2006年の10.9%から2010年の16%に増加した。小学校の女子の純就学率は2005-2006年の81.2%から2010年の89%に増加した。小学校1年生の純入学率は同じ期間に65.6%から100%になった。
同じクラスで進級できない女児の割合とドロップアウトした女児の割合をそれぞれ少なくとも2%と3%削減するのに適した条件を作り出す。
2005-2006年の中学校の女子の就学率46.2%、高校の最終レベルの女子の就学率29.5%から、2010年にはそれぞれ63.4%と35.5%に増加させる。
すべての目標となるグループで読み書きのできない女性の削減を試みる:識字率:15-24才2003-2004年74.7%、2010年90%;15-40才2003-2004年77.5%、2010年88%;15才2003-2004年71.3%、2010年80%
ほぼ4万人に小学校レベルの訓練コース、約8000人に職業訓練を実施する。訓練生の60%は女性が占める。
より高い教育機関や大学に入学する女生徒の割合を2003-2004年の30%から2010年の40%に増加させる。
こうした目標に対応するために、政府は教育開発の国家予算の配分の割合を2005年の11.6%から2010年の16%に一貫して増加させる計画を立てた。

公衆衛生管理の状況
過去10年間、女性の健康状態は一般に改善された。妊産婦死亡率は1995年の出産10万件あたり656人から2000年の530人、2005年の405人に、減少した。幼児死亡率も1995年の幼児1000人あたり104人から、2000年の82人、2005年の70人に、減少した。1995年から2005年の出産率は出産年齢の女性1人あたり5.6から4.6に減っているが、依然として東南アジアで最も高い。農村地域に住んでいる女性の出産率は5.4で、都市地域に住んでいる女性の2.8に比べて高い。その理由は女性、特に農村地域や遠隔地に住んでいる女性の情報や健康サービスへのアクセスが限られていることである。少数民族の中には自分たちの信念や伝統的な習慣に影響されている人たちもいる。彼らは病気をした時に、病院へ行かない。その上、財政問題は、人々が病院などの治療を拒否する、もう一つの難しい要因である。

こうした状況のために、公衆衛生部門も現在から2020年までの長期の戦略計画を立ち上げた。そこには4つの基本的な任務が含まれる。それは:
  1.適切な公衆衛生サービスのネットワークを開発し、確実にすべての人が衛生管理サービスを平等に利用できるようにする。
  2.包括的な公衆衛生サービスシステムを開発する。
  3.基本的な公衆衛生サービスを提供する。
  4.公衆衛生サービスにおける自立を促す。

4. 人身売買と家庭内暴力
国連が見積もった東アジア地域の人身売買の被害者数から、25万人から40万人の被害者が存在し、そのほとんどは女性と子どもであることがわかる。労働・社会福祉省の報告によれば、2001年10月から2009年10月までに帰還した人身売買の全被害者数は1424人で、そのうち50人は男性で、18才以下は1223人だった。

さらに、2005-2006年のラオスとタイ政府による調査研究によると、216,623人のラオス人がタイに移住したが、そのうちの何人が人身売買の犠牲者かはわからない。2007年から2008年の9月に28,866人のラオス人が不法移民として非公式に送還されたが、そのうち10,926人は女性で、1636人は18才以下だった。

人身売買の主な原因は:
―農村と都市、ラオスと周辺国の間の収入の格差、情報のグローバル化と地域経済が開放されていること
―貧困とより良い生活の夢
教育の低いレベルと人身売買の斡旋人の罠についての理解がないこと
雇用の機会の不足、危険な労働移住など

そうしたことに加えて、女性は搾取され、性的サービスをするよう強制された。これは注意を払わなければならない、ラオスだけでなく世界中で起きている問題の一つである。国立大学と労働・社会福祉省が2004年に行った、サービス部門で働く女性と子どもの労働についての調査によると、ラオスの4県12郡の73の歓楽街で4235人の女性と子どもが働き、そのうち35.7%が客に売春をしていた。同じ事例で、インタビューされた女性と子どもの約90%が、女性と子どもの人身売買について気づいていないことがわかった。

女性の性的サービス提供者の数が増える主な原因には厳しい生活条件、家族の幸福の欠如、別の被害者にだまされたことが含まれる。また、女性や少女の中には両親を助けるために送金しなければならならない者もいる。その上、経済的な圧力から歓楽街で働いて余分のお金を稼がなければならない者もいる。そこでは女性は男性の客に性的に搾取されるリスクが高いことが多い。

貧困は家庭内暴力など、様々な形態の女性に対する暴力の原因の一つである。2003年にラオス女性連合(LWU)は6県(カムアン、サワンナケート、セコン、 シェンクアン、ルアンチムター、ヴィエンチャン特別市)の18郡の54村で家庭内暴力の調査をした。1169人にインタビューをしたがそのうち602人が女性で、567人は男性だった。調査では1169人のインタビューを受けた人のうち、300人が精神的に虐待され、101人の男女と21人の妊娠中の女性が身体的に虐待されたとのことだった。調査では家庭内暴力の原因は飲酒、経済的な問題(貧困)、子だくさん、不倫、嫉妬、仕事の雇用、家事の増大、ギャンブルなどであることがわかった。

ここ何年間か、ラオス政府は、家庭内暴力とともに、貧困の削減、女性の地位の向上の促進、人身売買の予防、人身売買との闘いに関する多くの政策やプログラムを発表し、実行した。2004年以降、国民議会は女性の開発と保護に関する法津を承認した。人身売買、とりわけ女性と子どもの人身売買と闘う重要な施策は第24、25,26,27,28,49,51,52条にはっきりと述べられている。同様に、2006年2月26日付け首相令No.26/PMの第14条から37条にも書かれている。さらに、前記の法律の第29条から38条、50、51,52条と 前記の首相令の第38条から48条にも女性と子どもに対する家庭内暴力と闘うための施策が記されている。

2005年、国民議会は人身売買との闘いに関する刑法第134条を改正した。さらに、ラオス政府は人身売買と闘うための国家運営委員会を設置し、人身売買、家庭内暴力、性的搾取の被害者用のシェルターを提供した。同様のシェルターには、ラオス女性連合の「女性と子どものためのカウンセリングと保護センター」、労働・社会福祉省管轄の一時避難センターがある。

結論、問題、障害と勧告

1.結論
ラオス政府は貧困撲滅を、2020年までに後発開発国の地位から脱出を目指すための到達目標だけでなく、ミレニアム開発目標を達成するための社会経済戦略の最優先課題だと考えている。
ラオス政府は常に、女性の地位の向上を促し、ラオスのあらゆる少数民族の女性の利益を守るために、CEDAWを実行する努力をしてきた。関係省庁と組織もラオスの特徴と現実に沿って、CEDAWの実行に積極的に関与してきた。
女性の地位の向上とラオスのあらゆる少数民族の女性の利益の保護に責任を持つ組織、すなわち、ラオス女性連合は1955年に設立され、女性の地位向上のための国家委員会(NCAW)は2004年に設置された。

これらは権限を持ち、実行する、主要な2つの組織である。その活動は:ラオスのあらゆる少数民族の女性の権利と利益を守る;社会でのジェンダー平等の実行を奨励する;ジェンダー主流化戦略を展開し、国家社会経済開発計画で女性の地位の向上を促進することである。

女性の権利に注意を戻し、女性の権利をまとめるために、憲法と多くの法律が、改正された。
ラオスの女性の教育と健康の状況は徐々に改善されてきた。教育に関して、女性と子どもの識字率は上昇してきた。ほかにも、非公式な教育は、ジェンダー平等に従って改善されてきた。
健康管理に関しては、妊産婦と幼児の死亡率は徐々に改善されてきた。
国民議会で代表になる女性の数は以前よりも増加してきた。
政府は、女性に信用貸し、貧困削減基金、不動産へのアクセスを可能にする施策を採択した。結果として、商売をしたり、家族の所得創出に関連する仕事に就く女性が増加した。

2.問題と障害
ラオスは多くの面で進歩してきたが、依然として多くの難題に直面している。

ステレオタイプの態度と有害な伝統が未だ社会に存在している。こうした難題の解決策を見つけるのにもっと多くのことをしなければならない。
女性の地位の向上を推進し、女性、特に遠隔地の女性の権利と利益を守るための人材、専門知識、予算が不足している。
社会はジェンダー主流化とCEDAWの認識と理解を制限してきた。
女性は法律的な情報へのアクセスを制限されてきたので、自身の法的権利を守ることが困難になった。
国民、特に貧しい女性は自己開発の機会はなく、基金、教育、開発情報、健康管理などの社会経済的なセービスを受けられない。

3.勧告
態度に変化をもたらすことと、否定的な態度、すなわち一つの性をもう一つの性よりも劣るものとして扱う不適切な伝統と習慣の撲滅を目指して、ラオス社会全体でジェンダー平等の認識を高める施策を採用し、行動を取る。
ジェンダー主流化に関して、中央レベルでも地方レベルでもあらゆる部門で理解力を高める。
女性の法律サービスの利用を促す要因を作り出す。
女性の地位向上の促進と女性の権利と利益の保護にたずさわる組織や機関をさらに改善する。
継続して女性の教育レベルを改善し、確実にもっと多くの少女が就学できるようにする。
健康管理と社会福祉サービスの、女性、特に障害のある女性の利用を促進する。
女性の雇用を作り出す。とりわけ、家政婦の仕事に経済的な価値を与える。
生産資本、市場の情報、生産技術などの経済的な機会に、遠隔地に住む女性がアクセスできるように改善する。
中央レベルでも地方レベルでも開発、行政、意志決定の場に女性の参加を促し、増大させる。
メディアを通じて様々な方法で、ラオス憲法、法律、ジェンダー、CEDAWについての情報を広める方法を改善する。
ラオスにおけるジェンダー平等および女性の地位向上の推進に従って、貧困撲滅、女性に対する暴力絶滅の努力をするラオスに対して、継続して財政的技術的援助と支援をすることを、ASEANおよびASEAN+3諸国、国際組織、地域的組織、NGOに要請する。

 マレーシア

ナディマ・B カマルデイン
女性・家族・社会開発省 課長補佐

1 序論

貧困撲滅は、国の社会経済のなかの不平等に取り組むより大きな努力の中で、最初にとられるべき重大な一歩である。これがひいては、市民の必要の充足、社会経済基盤の強化、経済成長の維持、調和と安定の持続を保証する。貧困撲滅は、女性や少女の教育・雇用・法的保護へのアクセスの平等と機会均等を保証することによって、女性と少女のエンパワーメントと共に進められるべきである。そこでマレーシア女性・家族・地域社会開発省(MWFCD)は、全ての女性が世帯内また地域社会で「発言」権を持つことを保証するため、女性の経済的エンパワーメントを本省の主要課題と位置づけた。そして、世銀の貧困緩和戦略における主題−ジェンダー平等としてのスマート経済を継承し、この主題を本省の現行戦略とした:“女性への投資はスマート経済である”。これは、マレーシアの1,360万人の女性の可能性を引き出し国の全体的な経済発展に女性を統合するため、国全体が責任を持って取り組むものである。
この報告は、女性に経済的力量をつけ、そうして貧困から引き出すために、マレーシア政府により主導された取り組みの分析である。

2  マレーシア::概観

マレーシアの2008年度の人口は2,770万人で、そのうち総人口の49.1%(1,360万人)が女性である。表1.1に見られるように、住民の年齢はかなり若く、多くのマレーシア人(63.5%)が15-64才の生産年齢に属している。

1980年以来、出生率、死亡率は共に減少している。2008の粗出生率は千人あたり17.5、一方粗死亡率は4.5であった。寿命は男女とも延びている。1980年の女性の平均寿命は71才、男性は66.5才だった。2008年にはそれぞれ76才と71才だった。
1,360万のうち15才から64才の870万の女性が労働力の範疇に入る。このうち、2008年の女性の労働力への参与率は395万人、45.7%であった。この事実によるならば、もしも女性労働力率の割合が増加すれば、それは国にとってもっとダイナミックな経済成長をもたらすだろう。

中所得国であるマレーシアは、1970年代以来原料生産国から新興マルチセクター経済にと変容を遂げてきた。そしてハイテク産業、医療技術、医薬品への投資を誘致して、付加価値を生む生産連鎖の更に上位へと経済を押しあげるため努力している。
国の経済的進化の全般的な足取りは、一連の五カ年計画に詳しく描き出されてきた。1971-1990年の間、公平を伴う成長に焦点を合わせた新経済政策(NEP)が国の政策を導いた。NEPの後を受けた国家開発政策(NDP)(1991-2000)は、NEPの主要要素を受け継ぎながらよりバランスのとれた発展のため、社会的価値の強化、環境保護などいくつかの新しい主眼項目を導入した。さらに、マレーシアが2020年までに達成すべき発展を概観した「ビジョン2020」は、国の将来にとっての鍵を握る青写真である。

3  貧困の緩和:マレーシアの経験

貧困撲滅はマレーシアの発展計画項目の中で上位にランクされている。マレーシアは貧困撲滅と社会の再構築を、国の経済発展を方針づける二本柱の目標として設定した。NEP(1971-1990)のもとでの獲得目標は、貧困率を1970年の49.3%から1990年の16.7%に引き下げることだった。引き続いてNDP(1991-2000)のもとで、目標は2000年までに貧困率を7.2%に、ハードコアの貧困率を0.5%に引き下げることだった。結果として、マレーシアは国民の貧困率を3.6%に引き下げることに成功したが、ハードコアの貧困層は0.7%だった。2001-2010年の国家ビジョン政策(NVP)のもとでの目標は、2010年までにハードコアの貧困層を根絶することである。

NDPの期間中に、「ハードコア貧困層のための開発プログラム」(PPRT)が導入された。プログラムはハードコア極貧世帯の世帯像についての記録簿をつくり、その特有のニーズに取り組むための一連のプロジェクトを組み入れた。雇用条件にかなう能力(エンプロイアビリティー)や収入の向上、PPRT住宅プログラムのもとでのよりよい住居やこども達への補助食品の供給、教育的援助の提供などである。更に極貧層は、ユニット投信計画(ASB-PPRT)のシェアを購入して収入の補足とするよう、無利子のローンを提供された。
NVPの期間には、貧困撲滅プログラムはSkim Penbangunan Kesejahteraan Rakyat(SPKR)のもとにまとめられ、ハードコア極貧層・一般貧困層の問題と農村・都市部の特定の弱者グループの問題に取り組んだ。貧困地区の削減、とりわけ半島マレーシアのオラン・アスリとサバ、サラワクのブミプトラの少数民族のあいだの貧困地区の削減に向けて、プログラムやプロジェクトが組まれてきた。不法居住者の再定住や低価格住居プロジェクトのような、都市部の貧困に取り組むための特別な方策も着手された。また、2001年、都市部の貧困と、少しの景気悪化でもすぐに影響を受ける都市部低収入世帯の問題に取り組むため、「都市部の貧困に関する内閣委員会」が設置された。さらに最底辺30%の収入増と生活の質の改善のための努力がなされている。
ハードコアの貧困とは、貧困ラインの半分以下の収入しかない世帯を指している。1990年に初めて導入されたハードコアの貧困という概念は、極端な貧困の根絶を強調するためであった。2007年の貧困ラインの収入は、半島マレーシアで月720RM(マレーシア・リンギット)、サバで960RM,サラワクで830RMだった。ハードコア貧困層がより高率に見られたのは、老人を世帯主とする世帯で2002年に4.9%、そして女性が世帯主の世帯では9.4%を記録した。貧困撲滅の鍵となる戦略は、より給与の良い職層においてより多くの雇用チャンスを生み出すことである。さまざまな分野にかかわる貧困関連の諸問題を簡素化するため、政府はe-Kasih―貧困およびハードコア極貧世帯のプロフィルについての全国登録 と呼ばれる貧困データマッピング計画を実行した。貧困撲滅を扱う様々な機関、すなわち地域開発省、福祉局、教育省により精力的に情報更新されるこのデータベースの提供によって、政府は、貧困層・極貧層に特有なニーズにみあうよう調整された一連のプロジェクトを導入することが出来る。例えば、雇用条件に見合う能力や収入の向上、よりよい住居やこども達への補助食品や教育的援助の提供など。障害のある極貧者、高齢の極貧者には、直接の財政支援がなされた。

4  女性への投資はスマート経済

マレーシア政府は、女性の進出を強く提唱する。女性は国家建設において死活にかかわる資産だからである。女性人口の能力をおおいに活用し同時にその潜在能力を解放することは、国の社会的経済的前途に繁栄をもたらすだろう。女性は国が進歩するための不可欠な構成要素と見なされる。そのため国連や世界銀行のような国際機関は、女性の発展を国の進歩に関するひとつの基準としている。この基準は、開発の受益者であるという点において女性が取り残されていないことを保証するために確立されたものである。

2000年のミレニアム開発目標(MDGs)はグローバルな基準点として定められ、女性関係の要素が、8つの設定目標の中に戦略的に含み込まれている。従ってMDGsは、世界の女性住民への投資における国際社会の戦略的アプローチと見られている。これに関してマレーシアは、女性と子どもについてのMDGsの設定目標の達成を保証することに熱心に打ち込んでいる。

設定されたMDGsの達成に向けたマレーシアの努力には以下のようなものが含まれる: 貧困と飢餓をなくすためのMDG1に関連して、マレーシアは、貧困との取り組みに強力な実績を持っている。1971年、新経済政策を発表して事実上貧困との戦いを宣言し、その後30年のうちに、貧困世帯の割合は40%以上から4%以下に減少した。これは、継続可能で公平な成長を推進した政策の結果である。

普遍的な初等教育の達成に関するMDG2について、マレーシアの教育政策は、性別にかかわらず全ての人の教育の機会均等を保証している。マレーシアの無料教育政策により、97%の女児が初等教育に入学した。マレーシアは実際、全国民の初等教育を1990年までに実現し、2005年には教育におけるジェンダーの平等を達成した。現在、教育政策の結果、より上級の学習機関における女性の学生数は2007年に総学生数の60%以上になっている。

ジェンダーの平等と、女性のエンパワーメントについてのMDG3に関連して、「ジェンダー」という言葉を、差別を禁止する根拠の一つとして加えるため、連邦憲法の8条(2)は2001年に修正された。

子どもの死亡率を引き下げることに関するMDG4について、2008年マレーシアは出生1000件につき乳児死亡率4.5を記録した。我々は常に健康分野を、年間予算配分における最優先部門の一つとして強調してきた。同様にMDG5の妊産婦の健康の改善に関連して、妊産婦死亡率は2007年出生1000件に0.3を記録した。

MDG6について、マレーシアはマラリアその他の重要な疾病の実質上の排除に大きな成功を収めた。HIV/AIDSの罹患率はまだ大きな挑戦課題であるが、この病を統御するための攻撃は始まっている。HIVの新規の届け出は、人口10万につき27人だった2003年に比べ、人口10万につき16.7人に減少している。政府が伝染病を減らす決意をしている一方で、我々は今、エイズの女性化という新しい挑戦課題に直面している。HIV/AIDSに感染する女性数の増加傾向は、マレーシア政府の一つの大きな懸念事項で、女性の間のこの流行病を抑制するあらゆる努力がなされている。

女性の経済的エンパワーメントとは、女性が個人的な前進、健康なライフスタイル、知識を追求する自由とアクセスを自分のものとし、女性の基礎的心理的な必要を充足する以上の生活水準を獲得して、国が希求するレベルの社会的満足度(social well-being)を達成することとされる。
政府は全体としての貧困の根絶に成功しているが、貧困女性、特に女性世帯主の家庭は、特別な必要と緊急な支援を求めている。貧困女性の問題は複雑で、さまざまな要因によってもたらされ、そのためいろいろ異なった視点から取り組まなければならない。根本原因は収入のないことで、これは都市部では生活コストの高さによってさらに深刻になる。従って貧困女性の生活で肯定的変化を持続させるためには、能力強化が欠かせない。
女性の間の貧困の撲滅には、政府、民間部門、NGOの三方向からのアプローチが必要である。このなかで、マレーシア女性・家族・地域開発省(MWFCD)の部局の一つである女性開発局は、経済開発、能力強化及び生活の質の改善に焦点を合わせつつジェンダーの問題を開発計画の中に統合する第一の責任主体である。この点においても、同局は女性の経済部門への参加拡大についてNGOと共同して働いている。NGOは政府が草の根レベルで国民に接触するための重要な仕組みであるだけでなく、きわめて重要な構成要素ととらえられている。2001年から2008年の間に、MWFCDは3,200万RMを607のNGOに配分し、1,687の能力強化プログラムを実行して30万人以上の参加者に貢献した。

女性を経済的にエンパワーするとき壮大な行動計画は必要ない。小規模金融は、女性が容易に資金調達にたどり着ける現実的なアプローチである。この側面は女性が経済活動に踏み出す際の最大の障害になっている。政府は、低所得グループからの起業を奨励するため、アマナ・イクティア・マレーシアAmanah Ikthtiar Malaysia(AIM)を通じ小規模金融計画を展開している。

● 結論

マレーシアは貧困撲滅に成果を収めているが、とりわけ貧困女性への援助面でするべきことはまだたくさんある。マレーシアはこの戦いの努力において更に創造的にならなければならない。”e-Kasih”データベースを通じて異なる部局間の共同作業を向上させることは、様々な機関が喜んでこれを使い全てのグループに手をさしのべるため協力するかどうかにかかっている。貧困の女性化は本来複数の側面を持つため、この問題に取り組むためにはより全体的な包括的なアプローチが要求される。マレーシアは2020年までに先進国経済を達成しようと構想しており、国の発展におけるこの重大局面において政府、NGO、民間部門の間の三者協定は決定的である。職の創出を容易にするため政府が民間部門と更に緊密な関係を持って働く必要がある一方、貧困を更に削減するためにボランティア精神を活用できるNGOは、貧困との闘いにおいて更に大きな役割を果たすことが出来よう。学界が貧困との闘いに参加することもまた、異なった新しいアプローチを活用するうえで決定的な意味を持つ。女性への投資はスマート経済である。ゆえに、女性のエンパワーメントへの投資はジェンダー平等への決定的な手段となる

1 Malaysia Life Quality Report, 2004-Economic Planning Unit, Prime Minister’s Department,, ,MALAYSIA
2 Malaysia Report to the United Nations Committee on the Elimination of Discrimination Against women(First and Second Report), Ministry of Women, Family and Community Development
3 Statistics on Women, Family and Community Malaysia, 2008

 フィリピン

マリーベス C. フロラルデ
女性委員会委員長

フィリピンはこの10年間、差別、とりわけ女性に対する暴力(VAW)および搾取と取り組む政策を制度化して以来、長い道のりを進んできた。
まず第一に、女性の人権を熱心に唱道するうえでの転換点の一つは、1987年フィリピン憲法第II条第14項である。これは「国は国家建設における女性の役割を認識し、女性と男性の法の前に置ける根本的な平等を保証するものとする」と強調している。

さらに、政府は「女性のための枠組み計画」(FPW )にしたがって女性のエンパワーメントとジェンダーの平等を追求している。この枠組みは「ジェンダー対応の開発のためのフィリピン計画」(PPGD 1995-2025)の短期プランの一つである。FPWは、女性が十全な前進をとげるための政府の重点項目として、女性の経済的エンパワーメント、女性の人権、ジェンダー対応の政治に優先順位を与えている。これは、女性の前進のための国家機構である「フィリピン女性の役割についての全国委員会(NCRFW)」によって、非政府組織(NGO)と市民社会グループとの共同の努力を通じて遂行されている。この枠組みはまた、国際協定とりわけ「女性に対するあらゆるかたちの差別の撤廃に関する条約(CEDAW)」、北京行動綱領(BPFA)、そしてミレニアム開発目標(MDGs)と緊密な連携を保っている。

立法上、また政策決定上の成果

国際的国内的要請に従い、さまざまなかたちの女性への暴力(VAW)を減少させ最終的に除去するため、いくつかの国内法、政策、プログラムがつくられている。その中には、1995年の共和国法7877号別称セクシャル・ハラスメント禁止法、1997年のRA(共和国法)8353号別称レイプ禁止法、2003年のRA9208号別称特に女性と子どもの人身売買禁止法、 2004年の、女性と子どもへの暴力禁止法として知られるRA9262号がある。現在までのところ、政府諸機関はこれらの法律をさらに効果的に履行するための協働作業を強化している。
・人身売買禁止法は2003年に通過し、人身の不正取引行為とそれを斡旋する行為を犯罪と定義している。この法律ではまた、売春を、女性だけによって犯された犯罪ではなく、金銭または利得を目的として他人を性交またはわいせつ行為のために使用することを伴う全ての行動、取引、または企画と定義しなおした。また、同意の如何を問わず、売買され売春に携わる女性の「使用者」もしくは顧客を含むさまざまなタイプの違反に対して刑罰を明記している。
● 女性とその子どもに対する暴力禁止法(AVAWCA)−この法律は、高頻度で起きている、親密な関係にある女性に対する暴力をくい止め、加害者を有罪とすることを目指している。これはまた、結婚、デート、内縁関係などの状況下にある女性と子どもを保護する。同法はまた、被虐待女性(バタードウーマン)症候群(BWS)を、度重なる虐待に苦しみ自らを守ることを余儀なくされた女性にとっての合法的防衛のひとつと認めている。同法によって、暴力を止め将来の暴力の再発を防ぐために、保護命令が発布される。
● 司法改革−最高裁判所が司法原則と法廷手続きの改革に着手した。家庭裁判所の復権に関する法律が可決されたあと、家庭内暴力(DV)のケースの告訴と保護命令の発令を容易にする新しいルールが導入された。
 
VAWの統計

RA9262号が2004年に通過して以来、妻を殴る行為を、この法律への侵犯とする警官達が出てきた。しかし、訓練を受けていない警官達は未だに、こうしたケースを単に妻への暴力/身体的傷害ととらえ続けている。2008年に警察に届けられたVAWの事例は2007年から21%増加した。この増加によって、2001年から2006年の6年連続の下向傾向が上向きに転じた。(付録 図1)しかし、下向き傾向を、国内の現実のVAWの発生の減少と断定的に解釈することは出来ない。データはフィリピン国家警察(PNP)に届け出のあったものだけをもとにしてつくられているからだ。
身体的傷害および/もしくは妻を殴ることは、1997-2008の12年間を通じて、もっとも広汎に見られる行為で、報告されたVAW事例全体のほぼ半分(49.6%)を占めている。レイプの報告事例(13.8%)は、1999から2008に報告されたVAW事例の平均の構成比で第二位にランクされている。レイプの報告数には減少傾向が見られる−2004年には946例が、2008年は811例である。RA9262号のもとで報告されるケースは、2004年の218例から2008年の3599例へと増加を続けている。この法についての大々的な情報キャンペーンとその厳密な適用が、さらに多くの警官に、妻への暴力のケースはRA9262の侵犯であると類別させたのかもしれない。RA9262の侵犯は12.5%で第三位だった。しかしデータは、同法が2004年に施行されてからの5年間しかカバーしていない。わいせつ行為は1999-2008の間に報告されたVAW事例全体の約8.8%で4位を占める。数値の比較でも(添付資料A)、報告事例数は2000年と2002年の733例をピークに減少傾向にあることを示している。最も報告件数が少ないのは同棲で、1999から2008年の間でわずか2.2%に過ぎない。

各地方の間では、VAWの報告件数は首都圏(NCRF)で最も多く、2008年1月から12月で1,541例あり、全国届け出件数の22%となった。次が第11地方(ダバオ)で、報告VAW件数1,444(21%)だった。ミンダナオ・イスラム自治区(ARMM)の報告VAW件数は2008年わずか72件で最も少なかった。(付録 表1、図2)

人身売買に関しては、2004年から2008年の間に全部で102件が報告され、その中には、性売買(sex trafficking)、強制売春(white slavery)、2003年のRA9208別称人身売買禁止法違反のケースが含まれる。また、2008年には人身売買(TIP)に対する総数160の申し立てが司法省国内追訴局(DOJNPS)と地方追訴事務所によってなされた。これらのケースのうち、80が係争中、37がTIPケースとして法廷に告訴され、16がその他の関連刑法違反として法廷に告訴されたが、27例は却下/中止/取り下げとなった。今日までに、RA9208違反で13の有罪判決が出ている。

2007年に報告された3,780の全VAWC(女性とその子どもに対する暴力)の事例では、総数718のバランガイ保護命令(BPOs)が発布された。2008年には、各地方から報告された総数5,403ケースのうち、372件のBPOが出された。これは、2007年の19%から2008年にはわずか7%のみという、BPOの発布の下向傾向を示している。

社会福祉開発省(DSWD)のデータは、サービスを受けた特別に困難な状況下の女性(WEDC)の数が減少傾向にあることを示している:1999年7,763件から2007年は5,549件である(図3)。

DSWDが2007年に扱ったWEDC総数(図4)のうち、「不分類」と「その他」の合計が、半数以上(58.7%)になっている。「不分類」事例のクライアントは、「ストランジー(行動の自由を奪われている人)、見捨てられた、感情的苦悩、未婚の母、性的搾取をうけた、自分の意志でかかわった/屈服した、ネグレクト、など」で、一方「その他」の項目には、「危機介入サービスを提供されたWEDCのクライアントで、分類されていない事例数」が含まれる。「不分類」と「その他」に分類されたものを除くと、身体的に虐待された/ひどい扱いを受けた事例とレイプの事例が、2007年にDSWDによって扱われたWEDC事例のリストのトップを占めている。取り扱い総数のうち、身体的虐待また酷い扱いを受けた女性は26.6%、レイプのケースは4.1%だった。

政策とプログラムの開発

2003年の人身売買禁止法, 2004年の女性とその子どもに対する暴力防止法の制定と共に、政府は直ちにこれらの法令の実行に取り組み監視するために、以下の機構を創設、確立した。
・ 人身売買禁止省庁間協議会( IACAT )
RA9208号第20条のもとに創設されたIACATは、中央政府の8部局と女性、子ども、OFW(在外フィリピン労働者)各セクターのNGOの3代表によって構成される。IACATは、政府の反人身売買の努力全体を調整しモニターする機構として働く。また、人身売買(TIP)の問題に取り組む政府の全てのイニシアチブを調和させると共に包括的統合的なプログラムを案出する仕事を課せられている。
・ 女性とその子どもに対する暴力に関する省庁間協議会(IACVAWC)。RA9262号第39条のもとに創設された。IACVAWCは、12の中央政府機関によって構成され、各機関はその権限に従ってVAWを根絶するためのプログラムとプロジェクトを案出すると同時に自分たちの職員がクライアントのニーズにもっと敏感になるよう能力開発プログラムを展開することを課題としている。また、VAWCイニシアチブの監視機構としても働いた。社会福祉開発省(DSWD)が議長となり、フィリピン女性の役割全国委員会(NCRFW)が協議会事務局を務めている。

準地方(サブ・リージョン)と地区(ローカル)レベルで人身売買や女性とその子どもに対する暴力と闘うため、二つの全国省庁間協議会は、人身売買とVAWCについての各地域の合同機構/組織創設のガイドラインを出した。2008年12月の時点で、以下の地方・地区機構が設置されている。
●17の「人身売買とVAWC禁止リージョン部局間委員会(RIACATVAWC)」が、全国17のリージョンで設置され活動中。
● 22の「人身売買とVAWC禁止州部局間委員会(PIACATVAWC)」
● 16の「人身売買とVAWC禁止市部局間委員会(CIACATVAWC)」、そして
● 63の「人身売買とVAWC禁止町部局間委員会(MIACATVAWC)」も組織された。

女性への暴力に対する取り組みに、男性と男児を巻き込むためとられた新しい動きに関しては、NCRFWが2006年、「どこであろうとVAWに反対する男達」(MOVE)の組織化に助力した。これは、政府、民間部門、学界、非政府組織を含むさまざまな組織に属しVAW排除に積極的に参加する男達の組織で、特に追求するのは:a)VAW反対の意見をはっきり言う。b)VAW撲滅における男性の全的な関わりと行動を、吟味し、提案し、計画する。c)地域でまた国際的にVAWのために活動している同じようなグループとのパートナーシップと連携を作る。d)、VAWの社会的影響を認識し、政策やプログラムの開発のため、調査、研究、フォーラムを組織、運営する。e) VAWに関する情報・資源・ネットワークをつくりあげる。

フィリピンMOVE.Inc.は非営利組織で、地方政府、NGO,そしてNGA(全国知事連合)の中にさえ支部拡大に成功している。MOVEは全国に展開し最初の全国評議員会を2008年12月に開催、続いて総会を開いた。MOVEは女性に対する暴力の撲滅についての意識向上活動をいくつか行ってきた。その中にはジェンダー、VAW、そしてレプロダクティブ・ヘルスのフォーラムなどが含まれる。また、ニューヨークで開催された2009年国連女性の地位委員会の、女性への暴力の撲滅における男性の関わりについてのパネルディスカッションに代表を送りさえした。

規約、規範、ガイドラインの発布

2006年、NCRFWは、DSWD,DILG,DOH,DOJそしてPNP(フィリピン国家警察)とのパートナーシップのもと、「フィリピンにおけるVAWに対するサービスの作業基準と評価手段」を創り上げた。これは仕事の標準的手順を規定しているが、それらがVAWの犠牲者・サバイバーの必要に対しジェンダーに敏感でジェンダー対応であることを特に保証している。VAW作業基準情報パッケージは、以下のような五つの各サービス分野のための五つの文書からなる。それらは:調査サービスまたその手順(PNP);医療または病院をベースとしたサービス(DOH保健省);心理社会的サービス(DSWD社会福祉開発省);法的/ 訴追サービス(DOJ法務省);バランガイ(村)、町、市、州各レベル(DILG自治省)と地方自治体(LGU)での反VAWサービス

人身売買の事例の調査と訴追の努力を強化するため、司法省はIACATを通じて、「人身売買事例の法執行と訴追のためのマニュアル」を作製した。マニュアルは、人身売買が疑われる行為や被疑者の監視から追訴に至るまでの、順を踏んだガイドである。また、人身売買被害者に対する適切な面接の仕方についての実用的面接ガイド、事例の処理を促進するための関連行政命令と人身売買被害者に支援を提供する関連政府機関の所在先が載せられている。

IACVAWCのもとでNCRFWもまた、「地方自治体(LGU)レベルでの女性への暴力についての照会システムの確立と運営におけるガイドライン」をつくりあげた。暴力の犠牲者・サバイバーの女性や子どもにはさまざまなニーズがあるという事実から、連携の必要が浮き彫りになっている。

VAWへの対応に傑出した地方自治体の探索とジェンダー公正賞II

「VAWを終わらせるための18日キャンペーン」の期間中、2008年11月25日に「VAWへの対応に傑出した地方自治体の探索(SOVAW-RLUGs」と「ジェンダー公正賞(GJA)」が始められた。SOVAW-RLUGsはLUGのVAWに取り組む革新的なプログラムや方法を顕彰することを目的とする。GJAのほうはNCR(マニラ首都圏)と,ルソン、ビサヤ、ミンダナオ3ブロックから、VAWのケースに対しジェンダーに配慮した決定を言い渡したジェンダーの視点に敏感な判事6人を顕彰しようとするものである。どちらの探索も2009年11月に再び行われ、授賞式は2009年VAWを終わらせるための18日キャンペーン中に行われるだろう。

2008年12月10日、世界人権宣言60周年を祝ったフィリピンは、アロヨ大統領が、大統領行政命令249号を発令し、政府の執行部各省庁に人権推進のための政策、プログラム、プロジェクトを制定するよう命じた。この命令においてNCRFWは特に、LGUやその他のVAWへの取り組みにかかわる機関を含む第一線の政府機関がジェンダーに配慮した公共サービスを提供するよう、ジェンダーを考慮した情報キャンペーンを主導する任務をまかされた。

人身売買についてのデータベース

IACATは、UNICEFのサポートを得て、異なる政府機関が保存する全てのデータを一つにまとめる包括的なデータベースの制作に着手した。法遂行(PNPとNBI)と訴追(DOJ)のためのデータベースは、既に予備的試験段階にある現存のDSWDのデータベースとリンクするよう考案されている。 標準報告フォーマットは、現在DSWD, PNP, DOJおよび国家捜査局(NBI)が使っている書式を参考につくりだされた。

VAW 文書作成システム

NCRFWは、IACVAWCの指導とガイダンスのもと、今年、国家VAW文書化と報告システムプロジェクトを予備的にテストする任についている。このプロジェクトの最終目的は、効果的かつ適切にVAWデータを集めるため、機能的なVAW書類作成システムのソフトウエアとデータベースを造りあげることである。

暴力の女性被害者とその子どものためのフリー・シェルター

VAWCの被害者・サバイバーのための45の居住用ケア・ユニット兼一時的避難所がDSWDによって維持され、フィリピンのさまざまな地域で利用可能である。そのうちのいくつかをあげると:(1)ザ・ヘイブン(安らぎの地)-18から59才の、性に基づく暴力の女性被害者または虐待や搾取に無防備な女性に直接的な介入を行う女性のためのケア・ホーム(代用ホーム)(2)少女のためのホーム兼センター - 虐待されまたは搾取された18才以下の少女のために、保護、ケア、治療、リハビリテーションの各サービスを行う。(3)Marillac Hills(少女のための国立トレーニングスクールとしても知られている)−法を犯した女児、18才以下の虐待・搾取を受けた少女にケアとリハビリを提供する子どものケアをする施設 (4)子どものための収容・学習センター − 0-6才の子どもに心理社会的サービスを提供する。こどもの生存、成長、保護の達成を援助する。(5)VAWセンター「ワン・ストップ・ショップ」と「女性と子どもに優しい」取り調べ室がNBIにより地区・地方NBI事務所内に設けられている。現在のところ、NBIには、5カ所の活動中のワン・ストップ・ショップと12カ所の活動中の女性と子ども取り調べ室がある。

2008全国人口健康調査(NDHS)

2008年、国家統計局は、全国を代表するほぼ14,000のサンプル世帯について、NDHS(全国人口健康調査)を施行した。NCRFWはこの中に、重要な分野を取り扱う新たな区分を含めることが出来た。それはフィリピンにおける女性に対する暴力の広がり(もしくは個人の安全)である。この活動から得られた情報のねらいは、政策立案者やプログラム管理者が国の健康と家族計画サービスの向上のためのプログラムと戦略を評価し立案するのを、援助することである。

最後に、女性の権利をさらに続けて促進するため、2009年5月に”Tinig ng Kababaihan”(女性の声)という、週1回のラジオ番組が放送サービス局(BBS)との協力の下に創設された。これは、女性による、そして女性のための、さまざまなトピックについてのディスカッションの場だが、男性にも聞いて欲しいものである。これは、NCRFWが共同ホストを務め、毎週金曜日午後12:15から1:00まで放送される。NCRFWはまた、VAWに関する短い宣伝をラジオで放送するよう提唱することが出来た。これは現在、全国21のラジオネットワークの局と、首都圏鉄道の13の駅で聞くことが出来、三つの現地語に訳されている。

残された課題と挑戦

われわれが獲得してきた成果をふまえ反VAWCイニシアチブを改善強化し続けるために、フィリピンは今も、不備や難題に即応する態勢を整えている。
1.これまでの教訓やシステムの改善点が、全国VAW文書化と報告システムの中に確実に統合され投入されるようにする必要がある。
2. VAW撲滅のための技術的支援提供に必要なスキルを身につけその努力を継続するよう、MOVEメンバーの能力の継続的向上を図る必要がある。また、MOVEは、プログラム、プロジェクト、その他の活動を維持するための追加資金を調達する必要がある。
3. 反VAW諸法の効果的遂行を継続的に観察・監視できるよう、広域地方や地方自治体のIACATVAWC機構を強化し機能的にする必要がある。
4. 最後に、VAW照会システムの設定を通じて、VAW被害者に対する多岐な専門分野にまたがるサービスと作業の標準的手続きを改善し統合する必要を、我々は認識している。

この報告を終える前に、我が国が達成した最近の画期的出来事を皆さんと分かちあいたい。女性提唱者たちの10年にわたる長々としたロビー活動、忍耐、決意、情熱の結果、2009年の女性大憲章(Magna Carta of Women)法別称RA9710号が、終に2009年8月14日グロリア・マカパガル・アロヨ大統領によって署名され法律となった。MCWは、女性の人権についての包括的な法律で、フィリピン女性、特に社会の周辺に押しやられた女性達の権利を認め、保護し、充足し推進して、女性への差別を撤廃することを求めている。MCWは、CEDAW(女子差別撤廃条約)が初めて国内向けに言い換えられたものである。RA9710に示される条項の中には、以下のようなものがある。:  全ての地方自治体(LGUs)への、女性に対する暴力のケースを扱う部局を全てのバランガイに設置するようにとの指令;性に基づく暴力から女性を保護し擁護することにかかわる全ての政府職員に、人権とジェンダーへの感性についての義務研修を必ず受けさせる;NCRFWはフィリピン女性問題委員会(PCW)と命名され、女性大憲章の施行を保証するための全体的な監視・監督組織となるだろう。;同じく人権委員会(CHR)も違法行為に対する申し立てを受理し行動を促す「ジェンダーと開発についてのオンブズマン」として指名されている。

今日、NCRFWとCHRは、関係する全ての政府部門、機関と協力し、NGOやCSO(学生組織評議会)代表の参加をえて、「法と規約の履行」(IRR)を考案するための地方及び全国のコンサルテーション・ワークショップの先頭に立っている。IRRは2010年3月8日、国際婦人デーの祝典に間に合わせて発足すると期待されている。

こうして、女性は今日の社会を変革してきた・・・私たちは、単についていくのではない、私たちがリードするのだ。私たちは変化の触媒であり起爆剤である。この会合が、私たちの娘や息子達そして女性にとっての未来世代のために、より人間的なより暴力の少ない社会への主張を続けるためのもう一つの経路とならんことを。


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 シンガポール

タミナ・B サパワウィ
社会開発青年スポーツ省社会援助局
社会援助政策化局長補

シンガポール政府は、家族間暴力を容認しない。「たくさんの援助の手」方式のアプローチを通じて、シンガポールは、政府機関、非政府機関、そして地域社会が緊密に連携共同することによって、家族にとって暴力のない環境を育成しようと努めている。このアプローチは社会サービス提供システムの基礎となるもので、シンガポールのかかえる社会問題に取り組むため、政府、地域社会、家族を含む様々な機関が協調共同して働くべきであるという原則にのっとったものである。

家族間暴力の定義
2  婚姻、および家族間暴力からの家族構成員の保護に法的根拠を与えているのは、1961年に制定された女性憲章である。女性憲章第64条は、以下の行為が犯されることを「家族間暴力」と定義している:
・故意にまたは承知の上で、家族構成員に傷害の恐れを抱かせるまたは抱かせようとする
・傷害を負わせると知られている、または当然知られていたはずの行為により、家族構成員に傷害を負わせる
・家族構成員を、その意志に反して不当に監禁または拘束する;そして
・家族構成員に苦痛・苦悩をもたらすため、または苦痛を与えるであろうと知りながら、継続的ないやがらせをすること

立法上の対応
3  1996年、家族構成員を暴力からいっそう良く庇護するために、女性憲章に修正が加えられた。修正条項では、家族間暴力の定義が感情的心理的な傷害も含むよう拡大され、また家族構成員の定義も拡大された。その他主要な修正事項には、暴力が行使されたまたは行使されそうだということに「合理的な疑いを差し挟む余地がない」ではなく、「総合的に判断し蓋然性が高い」場合という原則に則って法廷が保護命令を出すことが出来るようになったことが含まれる。これに励まされ、被害者が保護を求めるようになってきている。
4  保護命令または緊急命令に故意に違反する者はだれでも、2,000ドル以下の罰金、または6ヶ月以下の禁固刑、または両方を科せられ、二度目またはそれ以降の判決では、5,000ドル以下の罰金、12ヶ月以下の禁固または両方を科せられる。加害者が被害者に対し実質的な身体的障害を与えた場合には、刑法による告訴が行われる場合もある。
● 2007年9月刑法典の修正がなされ、個人保護命令の交付を受けている配偶者に対する違反側配偶者の強制的なセックスは犯罪とされた。この法律は配偶者による暴力の犠牲者に対しさらなる保護を提供するもので、2008年2月に施行された。

政策上の対応
6  シンガポールにおける家族間暴力の統御システムは、複数のセクターによる対応によって支えられている。地域開発・青年・スポーツ省(MCYS)は、家族間暴力管理のための政策及びサービス提供の枠組み設定に中心的役割をになっている。本省は暴力の影響下にある人々に効果的なサービスを提供するため、主要関連省庁、警察、ヘルスケアの専門家、社会サービス提供者とのパートナー関係のもとに活動し、それら各組織の調整を行っている。この複数のセクターによる対応は、さまざまなレベルにおいて確立している。

7  政策レベルにおいては、シンガポールにおける家族間暴力の管理の鍵となる基盤は、2001年に創設された「家族間暴力対話グループ」である。MCYS及びシンガポール警察が共同でこのグループを率いている。この対話グループは、法廷、刑務所、保健省、教育省、地域家族間暴力ワーキンググループの代表者達、ソーシャルサービス全国協議会、各種社会サービス機関からなっている。対話グループの創設目的は、さまざまな関係機関が連帯して戦略的な政策枠組みを作り、暴力の影響下にある家族へのサービスを強化するための共通基盤を提供することにあった。同時にこの複数の機関からなる対話グループは、家族間暴力予防のための公共教育の面でも努力を共にし、また各機関の間の活動もスムーズに進行させている。

8  事業施行レベルでは、支援と援助の密なネットワークを作るため全国家族間暴力ネットワーキングシステム(NFVNS)が1996年設立された。全島を網羅するネットワーキングシステムは、被害者が援助を得るための多数のアクセスポイントを提供している。このシステムは、警察、刑務所、病院、家族サービスセンター、裁判所、MCYSを結びつけている。家族サービスセンターとは、近隣住民を基盤とした社会サービス部門で、家族という社会資源支援の中心的役割を果たしている。センターは広範囲にわたる家族のニーズに対応するさまざまなサービスを提供しており、その中には、家族保護と復帰促進(リハビリ)、個別援助、財政支援などが含まれる。暴力の被害者また加害者は、早いうちにこれらのセンターに援助を求めるよう勧められている。

複数機関によるアプローチ
9  シンガポール警察は、ソーシャルサービス機関に属するソーシャルワーカー達との定期的なネットワーキング会議を実施している。これらの会議の目的は、共同作業のプロセスを改善し、家族間暴力の被害者に、調整された支援を提供することである。こうした努力は、コミュニティーにおける公共教育に合同で努力するという成果をもたらし、警察官とソーシャルワーカーの信頼関係を増強した。警察から社会福祉関連諸機関への家族間暴力被害者の紹介は2001年の171件から2004年の943件に増加し、その多くは女性とこどもである被害者に支援とケアを提供するため、時期を得た介入ができるようになった。警察とソーシャルワーカーの間のネットワーク発展の成果がここに見て取れる。

10  「地域家族間暴力ワーキンググループ」が2004年全ての地域に組織された。これは、家族間暴力への意識を高めるための地域協同活動に率先して参加・計画し、草の根のレベルで新しい傾向について調査吟味し、暴力にさらされた家族へのサービスの提供を増強し、「家族間暴力対話グループ」へのフィードバック機能を果たすために、コミュニティーのエネルギーを活用することを目的として設置されたものである。ワーキンググループは、病院、警察、危機シェルター、高齢者ケアサービス、そして家族サービスセンターの諸機関からなっている。設立以来ワーキンググループは、意識の向上、諸機関間でのトレーニングの提供、クライアントとコミュニティーへのよりよいサービスのためのプロジェクトの開始など、実り多い努力を重ねている。

11  MCYSとシンガポール警察は機関相互のパートナーシップを強化し、家族間暴力に関する政策、実施、調査において最善のやり方を学び共有する機会を持つため、毎年NFVNS(全国家族間暴力ネットワーキングシンポジウム)を共同で組織している。

12 家族間暴力に対する多面的なアプローチのためのもう一つの基盤は、家族間暴力と子どもの保護の分野にかかわる諸機関のために定期的にニュースレターを発行して、この分野での最新情報を提供することである。 「Networkz − 家族間暴力に抗して団結する諸機関」というタイトルのこのニュースレターは、2003年10月に発刊された。

家族間暴力の統合的対処のためのマニュアル

13 1999年MCYSによってまとめられたマニュアルを通じて、家族間暴力のケースをどのように支援するかについての共通理解が確立した。2003年2月に更新されたこのマニュアルには、ネットワーキングシステムのなかのそれぞれのパートナー機関の、規約、手続き、役割、責任が詳細に述べられている。ここには、暴力的な関係の中にある家族へのサービスと家族間暴力の予防にむけて、一体化したアプローチを展開するためにパートナーとして働くという、政府・非政府諸機関の共有目標が反映されている。マニュアル更新は続けられ、2009年10月21日NFVNSにおいてMCYSにより改訂マニュアルが発行された。

家族間暴力の傾向
14  1996年の女性憲章修正以来、個人保護命令(PPO)と家庭退去命令(DEO)の適用数は増加傾向をみせ、2001年ピークに達した。この期間、社会的認知度の高まりと援助へのアクセスの改善により、援助と保護を求めて行動を起こす家族間暴力の被害者の数が増加していった。2001年からは全体として減少傾向に転じ、2001年から2008年の間に14.4%減少している。この傾向は、家族サービスセンターに対して警察が早期の介入を求めて紹介するケースが増加したのと時期を一にしている。

15  下級裁判所は、2003年と2004年の間の家族間暴力事例の実態調査を行った。それによると、原告の82%は女性で、原告と被告は30代が最も多く、原告の37%が30~39才、被告の30%が35~44才だった。この研究では、教育面職業面の背景如何にかかわらず家族間暴力が起きていることがわかった。しかし、原告の71%被告の65%が月収1,500ドル以下であったことは注目に値した。
16  報告された暴力の中で際だっていたのは配偶者によるもので、全家族間暴力の69%を占めた。被害者の17%がこどもたち、5%が親、3%が兄弟だった。もっとも一般的な暴力のかたちは、身体的な暴行(42%)、これに多様なかたちの暴力(26%)と脅しが(18%)が続いた。

結論

17  過去10年にわたり、シンガポールは家族間暴力への対処の仕方を変容させてきた。今日では、さまざまなサービスをつなぐ包括的かつ全体的なネットワークが存在し、訓練を受けた専門家達が家族間暴力のケースに注意深く介入している。シンガポール政府は、多岐にわたる部門からの強力な支持とパートナーシップのもと、家族間暴力の根絶と、家族間暴力に対処する我々のサービス提供の継続的な吟味と向上に、真摯に取り組んでいる。

 

 タイ

ラリンテイップ・シロラット
社会開発・人間の安全保障省
女性家族局・局次長
はじめに

公的な場であれ、私的な生活の中であれ、女性に対する暴力(VAW)が人権の侵害であることは普遍的に認められている。また、VAWは、人間の安全保障や国の生産性だけでなく、人間の尊厳、生命の平等にも影響する。国際社会はこの問題が非常に重要であるとみなし、様々な暴力に取り組む国際協定や文書を締結してきた。女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)、北京宣言・行動綱領(BPFA)、子どもの権利条約(CRC)は重要な例である。

タイは女性に対する暴力(VAW)に対処する地域および多国間の取り組みに対し、国際的にも地域レベルでもVAWに関する条項を含む多くの重要な文書を批准している。例えば、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW),北京宣言・行動綱領(BFPA)、ビエンチャン行動計画(VAP)、女性に対する暴力撤廃に関するASEAN宣言(DeVAW)である。また、タイ国内の社会的なアジェンダでは、VAWは最重要課題の一つに位置づけられている。

タイの状況
タイの社会では女性に対する様々な種類の暴力が認識されるようになった。ドメスティック・バイオレンス、性的いやがらせ、虐待、売春の強制による身体的、性的、心理的、経済的暴力が広く明らかになった。しかし、公に報告された女性に対する暴力事件の発生数はほんのわずかである。それは氷山の一角でほとんどは海面下に隠れている。ほとんどの事件は暴力の犠牲者に対する伝統的な態度のせいで沈黙を守らされてきた。

タイ警察の報告によると、性に関係する犯罪の数は1997年から2007年の間に3741件から5269件に増加した。加害者が逮捕されたのは半数以下である。一方で、刑事裁判所と少年・家庭裁判所で非公開にされた性犯罪事件の年間の発生数は2003年から2007年の間に6056件から10094件に増加した。

ワン・ストップ・クライシス・センター(OSCC)は582の公立病院のさまざまな診療科が結集して暴力の被害者に包括的なサービスをしている組織であるが、それによれば、援助を求めている被害者は2004年には6951人だったのが2008年には26631人に増加した。一日に換算すれば、73人である。保健省の保健推進局によると、ほとんどの事件の加害者に夫やパートナーが含まれていることがわかった。また、ドメスティック・バイオレンスの原因は浮気、飲酒、誘惑だった。こうした暴力は、中部、北部、北東部、南部の地域で大部分は発見され、地方自治体のほぼ63.68%で起きていた。

搾取と人身売買に関しては、社会開発・人間の安全保障省の管轄下にある女性のシェルターや他のサポートセンターに避難していて、そこから援助を求めている女性と子どもは2004年から2006年の間に15,750人から18,617人に増加した。

一方、女性は労働現場でも虐待されている。女性問題・家族開発局とマヒドル大学が共同で行った「労働現場の好ましくない環境セクシャルハラスメント評価」の報告によると、調査された人の49.6%が職場で性的嫌がらせを受けていたことが判明した。

女性に対する暴力撲滅(EVAW)に関するタイの取り組み
女性と子どもに対する暴力は人権のきわめて明らかな侵害である。暴力は被害者の身体的・精神的な幸福を深く傷つけてきた。女性と子どもに対する暴力は社会経済的な地位の問題をしのぐ重要な問題になった。そのため、タイ政府は女性と子どもに対する暴力を予防し、撲滅するための包括的な取り組みを行ってきた。

法的な施策
1.1 仏歴2550年(2007年)タイ王国憲法第52条には暴力の問題が述べられている。「子ども、青少年、女性、家族は政府によって、暴力と不公正な待遇から保護される権利を有する」

1.2 1999年6月29日の内閣の決定により、女性に対する暴力に対処するための8法案が承認された。これらの法案の目的は家庭内であれ公の場であれ女性の安全を確保することである。その中にはポルノの禁止、性教育の実施、女性に苦痛を与えるサービスの改善が含まれているが、もっとも重要なことはバンコクをはじめ国中の公立病院の救急部門に危機に瀕している女性を助けるセンター(ワン・ストップ・クライシス・サービス OSCC)を急いで設立することである。

1.3 2000年5月16日の内閣の決定は、タイの全国の女性の機構と、関係する他の団体や組織、大学、専門家が共同で提案した「女性と子どもに対する暴力の撲滅のための政策と計画」に関するもので、女性と子どもに対する暴力の予防と暴力からの保護のためのマスタープランである。

1.4 ドメスティック・バイオレンス犠牲者保護法2007は、2007年11月に施行された。この法律にはドメスティック・バイオレンス(DV)の定義、DVをふるった人の刑罰、被害者の保護、被害者と加害者が身体的精神的健康を取り戻すための援助とリハビリが含まれている。さらに、この法律には目撃者は関係する役所に通報する義務があることが明記されている。この法律でタイはDVと取り組む特別な施策を持ち、新たな一歩を踏み出したのである。また、この法律に従って実行されたことについての報告書を毎年議会と内閣に提出するということによって、女性に対する暴力撲滅に対する政治的な意志も示されている。
 
1.5 反人身売買法2008。この法律では「搾取」を、同意の有無にかかわらず、性的搾取、ポルノの制作および販売、他の形態の性的搾取、奴隷、物乞いの強制、強制労働、臓器の売買、他の同様な形態の搾取を含むと定義している。この法律の重要な要素は(1)人身売買に関係するすべての人に対する重い刑罰、(2)犠牲者は加害者から人身売買よって生じたすべての傷害の補償を請求できる、(3)犠牲者はシェルターおよび身体、心理社会、法律、教育、保健の面からの援助など必要なことを与えられる、(4)2つのレベルの国内委員会の設置、である。第1のレベルの委員会は首相が議長を務めるもので、その機能と責任は人身売買の予防、保護、禁止に関係する政策の策定である。また国の配慮が必要な、新たに出てきた重要な問題にも取り組む。2番目のレベルの委員会は副首相が議長である。反人身売買国家行動計画の運営と実施の調整、さまざまな機関のために必要なガイドラインの設定、関係機関の実施状況の評価に焦点が当てられる。

さらに、この法律には人身売買の禁止と予防および人身売買の犠牲者の幸福を支援するために基金を設立することが明記されている。基金には政府からの毎年の財政援助、政府間レベルの組織や国際組織からの資金、民間部門からの寄付、人身売買の加害者から没収された資産が充てられる。

1.6 VAWからもっと女性を保護するための法改正。タイではVAWから女性の権利を保証し保護するために多くの差別的な法を改正した。例えば、刑法第276条:強姦の意味は、あらゆる性の人々に対する強姦、あらゆる形態の性的挿入、夫婦間の強姦の犯罪化にまで広げられた。刑法第246条:死刑の宣告を受けた妊娠中の女性は終身刑に減刑されることになった。

2.予防策
2.1 11月VAW撲滅キャンペーン、ホワイトリボン・キャンペーン。「11月VAW撲滅月間」とホワイトリボンをシンボルにするキャンペーンは1999年にタイで始まり、現在は毎年恒例のキャンペーンになった。キャンペーンでは広場でキャンペーンをしたりテレビやラジオで放送するだけでなく、VAWの問題の重要性を気づかせるために政治家、政府高官、他の社会に強い影響力を持つ人たちにVAWについての出版物を配ったり、ホワイトリボンのついたピンを配った。十代の少年少女をこのキャンペーンに参加させるために、有名人が大使になるために招かれたり、女性に対する暴力撲滅のキャンペーンに参加したりした。パチャラキティヤパー王女がUNIFEM親善大使就任と女性に対する暴力ノー運動に同意された。このことによって女性に対する暴力の撲滅に注目が集まった。

2.2 VAWに関して系統だった理解を促す出版物とメディアの開発と利用。女性問題家族開発局(OWAFD)は大学や市民社会部門と共同で、VAW についてのブックレット、パンフレット、CD、情報キットなどの一連の出版物やメディアを開発して、国民に配布した。それは特に、VAWの問題を社会のすべての人々に関係がある、国民の権利と人権の問題だと気づかせ、理解させるためである。

2.3 第十次全国経済社会開発計画における女性開発計画(2007-2011)。 女性に対する暴力は女性と男性の関係に対する社会の態度に深く根ざしている。第十次女性開発計画ではジェンダー平等に対するタイ社会の態度を変える努力をする。同時に、国の開発の担い手であり受益者である女性が自分の能力を十分に発揮して生きることができるようにするために女性の能力を開発し続ける。目標は以下のとおりである。1)子ども、青少年、女性、男性の間で人間の尊厳とジェンダー平等をもっと尊重すること、2)あらゆるレベルで政治や行政に参加する女性の数を増やすこと、3)保健政策作成の分野でさまざまなグループを代表する女性の参加を改善し、質の高いヘルスケアとリプロダクティブヘルスのサービスの利用を促進すること、4)女性に対する暴力の事件を激減させること、一方でこのような事件が起きた場合、援助手段やサービスをもっとうまく利用できるようにすること、5)女性の経済活動への参加と利益の分配を向上させるための条件をつくること。

3.支援策
3.1 ワン・ストップ・クライシス・センター(OSCC)がいくつかの公立病院に設置された。バンコク地区ではこのようなセンターは1998年にバンコク都庁の管理下で7つの病院に設立された。多くの県にもそれぞれいくつかのセンターが公衆衛生省のモニタリングと管轄の下で設置された。2008年のOSCCの総数は582である。センターでは暴力の被害者のために医療支援(身体的、精神的)、様々な分野にわたる専門家との社会福祉や法律問題についての相談、つまり、医療処置、心理学的な治療、法律的な支援、機能回復社会復帰訓練が行われている。

3.2 地域を基盤とした家族開発センターは、社会開発・人間の安全保障省と地域によって共同で設立・運営されている機関で、小地域行政機構の援助も受けている。センターはコミュ二ティーによって、コミュニティーのために運営されている。女性に対する暴力を含むさまざまな社会的な問題に直面している家族のためのカウンセリングだけでなく監督や監視の仕組みも整えられている。現在、全国で4000以上のセンターが存在する。

3.3 ホットライン1300、つまりプラチャポディーセンターは、社会開発・人間の安全保障省が設置した24時間開いているホットラインセンターである。ホットラインは、カウンセリングをしたり、社会的な問題、とりわけVAWに関する苦情や不平を処理するために、設置された。ホットラインのスタッフはソーシャルワーカーや臨床心理士で、広い範囲にわたるカウンセリング技術持ち、ケースワークをする。さらに、センターは関係機関へ被害者を紹介することにも責任を負っている。

3.4 子どもと家族のための緊急避難ホームは、社会開発・人間の安全保障省の管轄で、すべての県に設置されている。対象には暴力・性的いやがらせ・ネグレクト・搾取の被害者、孤児、望まない妊娠をした女性が含まれる。また、このシェルターでは女性の移民労働者や人身売買の被害者が本国に送還される前に社会的な支援が受けられる。

3.5 タイ警察の女性と子どもの被害者にやさしいサービス。中央捜査局センターの子ども・青少年・女性部は、女性と子どもの人権の保護を目的とする労働と人身売買事件を担当する特別な部署として2005年に設置された。さらにタイ警察は、こうした弱い人々が直面する問題やジェンダーに基づく暴力をもっと完全に理解するために警察官をもっと訓練し、もっと「被害者にやさしい」警察になるために捜査のプロセスを改善してきた。このような援助の向上は改正された1999年刑法の刑事訴訟手続きに従って証言を得るために用いられる新しい手続きと一致する。その上、女性と子どもの事件の捜査に婦人警官が投入される。たとえ婦人警官の数がまだ少ないとしてもである。2007年以降タイ警察学校では生徒に女性の権利を教えている。それによって女性と子どもの事件を担当する婦人警官が増えることが期待されている。

3.6 NGOの協力。政府機関のほかに、さまざまな非政府機関(NGO)も暴力の犠牲者になった子どもと女性を保護し、支援する大きな役割を担ってきた。こうしたNGO には女性の友財団、ホットラインセンター財団、女性財団、子どもの権利保護財団、子ども保護財団、パウィーナ・ホンサクン子どもと女性財団がある。タイのNGOはVAWの被害者のためのサービスを提供する重要な機関の一つである。NGOはとても柔軟で、被害者を支援する際に素早く対応することができるからである。NGOのスタッフはボランティアであれ、正規の職員であれ、理解力があり、経験豊富であることが多い。その上、NGOは政府機関とも緊密に連携して働いているので、効率よく保護や支援ができるし、絶えず調整作業を練り上げたり、改善することもできる。NGOの協力はタイの暴力の被害者支援の重要な特色である。

4. 関係する役人の能力の向上
4.1 VAWに関する対応手段 VAWに効率よく取り組むためのガイドラインとしてさまざまな対応手段が開発されてきた。例えば「暴力から子どもと女性を助けるためのガイドライン」は公衆衛生省と社会開発・人間の安全保障省の共同で2003年以降、医者・看護婦・ソーシャルワーカーなどの保健の専門家のために開発されてきた。ガイドラインは暴力の加害者だと疑われる者を特定するための手順の一覧表、チェックリスト、方法を提供する。

4.2 関係する役人の能力を高める研修 役人の能力を高めるためにさまざまな研修が行われてきた。例えば、検察官や警察官のような法律を執行する役人はジェンダーを基にした暴力、尋問のプロセス、被害者の感じやすさについて基本的な理解をするために研修を受ける。さらに、暴力の被害者保護法(2007)の実施も研修に含まれる。また、ドメスティック・バイオレンス法(2008)に沿った作業プロセスによる理解メモは、有効に能率よく働く協力省庁のガイドラインになるために書かれてきた。

データベースの収集
国家レベルでの系統的なデータ収集と総合的なVAWのデータシステムの促進に関して、女性問題・家族開発局は公衆衛生省、バンコク都庁、女性の地位推進協会、タイ警察庁と共同で女性と子どもに対する暴力事件の報告、記録、分類のためのオンラインシステムを開発してきた。システムは現在、全国オンラインVAW情報・調整センター HYPERLINK "http://www.violence.in.th" www.violence.in.th という名前で、まだ運営方法を開発している段階である。にもかかわらず、女性に対する暴力やドメスティック・バイオレンスに取り組む多くの団体や組織は協力し、暴力事件の報告をしている。

最高の実践をしている場所
ワン・ストップ・クライシス・センター(OSCC)はタイの暴力の犠牲者に総合的なサービスを提供する様々の分野の専門家を集めた組織である。センターは地域とコミュニティーのレベルで基本的に病院に設置され、医者や看護師だけでなく、タイ警察、弁護士事務所、政府組織や非政府組織、緊急避難ホームの代表、社会開発・人間安全保障省のソーシャルワーカーの代表が配置されている。従って、法的なアドバイスやシェルターの場所の提供が必要な時には、犠牲者はすぐにサービスや支援を受けることができる。

OSCCはたいていの場合、分野を超えた役割を引き受ける。言わば、VAW事件の報告を受け、必要とあらば他の機関(警察とか裁判所とか省庁)と調整するコールセンターでもある。また、OSCCの中には身体的治療のほかにVAWの情報や精神的な支援やアドバイスを提供する所もある。

トンブリ刑事裁判所は女性と子どもに親切なサービスをする最高の場所の一つである。裁判所は訴訟プロセスを、証人、とりわけ女性や子どもの証人を保護するための系統的で総合的なものに改善した。女性や子どもの証人は恐怖を抱いたり、傷つきやすいからである。まず第一に、裁判所では尋問室で被害者と加害者が向かい合わないようにする。尋問室には電子機器が備え付けられ、被害者が恐怖心を抱かないようにするために被害者と加害者の間に壁を設ける。さらに、証言を述べるときに対決しないですむようにする証言手続きや、子どもの証言に関する手続きは、こうした事件に取り組む法律に関わる役人のためのガイドラインとして、改革に着手された。第二に、裁判官や弁護士に取り扱いに注意を要する事件だと気づかせるために、女性や子どもの事件には特別なデザインのファイル・カバーが用意された。第三に裁判所の役人は女性や子どもの事件で聴取する際のジェンダーの微妙さや手続きに関して研修を受けた。現在この裁判所はタイでもっとも進んだ場所だとみなされており、女性と子どもにやさしいサービスを提供する、裁判所の役割モデルになるだろう。
さまざまな挑戦とこれから
女性に対する暴力の撲滅に関して多くの前進があったと言っても、タイには以下に揚げるような、挑戦しなければならないことがまだ多くある。

女性の権利を保証し、女性に対する暴力を撲滅するために多くの法律が制定されたが、法律の実施にあたっては、依然としてギャップがある。例えば、法律の実施と、法律を実施する役人の知識と理解のギャップである。従って、法律を実施する役人にもっと集中的で包括的な研修を考案しなければならない。

ドメスティック・バイオレンス被害者保護法(2007)の目的は、調停手続きを定めることによって家族制度を調停することであるが、それは女性の権利を奪う可能性がある。このように、この法律には女性の権利に影響を及ぼす賛否両論があるので、再検討されるべきである。

VAWの根本原因と取り組む長期的な手段として、ジェンダー主流化と伝統的な態度を変えることを最優先する。政府と連携組織はこの問題に対して社会の関心と理解を高めるために真剣に取り組んできた。まだ社会はジェンダーを基にした暴力や女性の人権に気づいていない。VAWの根本原因を根絶するために、さまざまな方法で研修や教育を行わなければならない。

あらゆる部門とさまざまな専門分野の人たちから成るチームが協力して活動する場合、自分たちの役割や責任、境界がまだはっきりしていない。被害者に効果的なサービスをするために、そのことを改善する必要がある。

被害者を沈黙させ、VAWを継続させる原因の一つは、社会、とりわけメディアが被害者に汚名を着せたり、ジェンダー平等の意識が欠けていることである。社会の中で、キャンペーンとか人権意識を高める運動やあらゆる形態の暴力反対運動を奨励しなければならない。

結論
報告ではっきりと示されているように、タイでは女性と子どもに対する暴力の撲滅に向けた過程でかなりの進歩が見られる。しかし、まだ長い道のりの途中であって、タイ国内でも国際社会でも良好な協力関係が非常に重要であることが認められている。従って、私たちは暴力の撲滅に取り組むさまざまな人たちの協力や共同を促し、強化することで、これからも挑戦していくことができるし、その中でVAWの問題は女性や子どもだけでなく社会のほとんどすべての人に関わる問題であるということを気づかせ、認識させることができるだろう。

国際的なレベルに関しては、より良い健全な協力と強い政治的意志、とりわけ政府が問題に取り組む強い政治的意志を示すことが強く望まれる。私たち皆が守らなければならない、女性に対する暴力撲滅に関するASEAN宣言(DeVAW)、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)、子どもの権利条約(CRC)のような国際条約の多くを考慮すると、女性に対する暴力は個人的なものではないし、国内の問題ですらなく、世界中に関係のあるきわめて重要な問題である。従って、地球レベルで注意を促し、行動を起こすことが必要である。

 

 ベトナム

カオ・トイ・タン・ツイ
労働傷病兵社会省国際協力局次長

T 近年の国情の概観

ベトナム社会主義共和国は東南アジアに位置し、国土面積は330,000平方キロメートル以上に及ぶ。ベトナムには54の少数民族がおり、キン族が多数民族でほぼ86.8%を占める。現在、ベトナムの総人口はほぼ8700万人、そのうち女性が総人口の約50%を占めその平均寿命は73才、男性の67.4才よりずっと高い。

過去数年にわたり、ベトナムは「ドイモイ」(刷新)政策と2001-2010期「経済的社会的開発戦略」を遂行し続けてきた。目指すところは「繁栄した国民、強い国家、そして公正な進歩的な社会」で「低開発の状況から抜け出し、2020年までにベトナムが基本的に近代産業国家になるための土台を作る。」ことである。ベトナムは全ての局面で継続して大きな成果をあげてきた。:政治的安定による経済成長の増進、生活の全局面における広範な民主主義、社会的平等と平行した貧困軽減、保証された公共の安全など。

II  関連する法律、政策、事業

経済的発展と平行して、ベトナムは社会的発展にも大きな努力を払ってきた。包括的で継続可能な貧困削減と社会的保護は、国の高度な優先課題の一つである。貧しい人々のうち、女性、とりわけ遠隔の山岳地域の農村女性、特にシングルの世帯主である女性や貧困層の高齢女性は、もっとも脆弱な人々である。従って、女性のた めの飢餓の軽減と貧困削減は最優先事項の一つと考えられる。過去数年にわたり、ベトナム国家は、女性のための飢餓軽減と貧困削減についての数多くの政策、事業を発布・施行して、憲法や国内法で公言されているように充足した幸せな生活から女性がうける利益を保証してきた。

● 2001−2010期「国家社会-経済開発戦略」は貧困削減のための目標を統合したもので、安定した高度経済成長率を保証するための具体的な指標、解決法、プログラム、プロジェクトにまとめられ、貧困削減と社会保護に関連する目標を実行するために好適な条件を創り出している。
● 2010年までの「女性の発展のための国家戦略」は女性の精神的物質的生活の質の改善を全体目標に定め、基本的諸権利を有効に履行するためのあらゆる条件を創り上げ、政治、経済、文化、社会のあらゆる局面で女性の役割を活かしている。この戦略には以下のような特定目標も設定されている。:2005年女性を筆頭とする貧困家庭の80%が飢餓緩和と貧困削減プログラムからローンを提供され、またクレジット借用者の50%も同様である。
● 2006−2010年の「貧困削減国家目標計画」には、2010年までの特定目標が含まれ、貧困世帯の割合削減、貧困世帯層の収入増加し、沿岸地方と島々の特別に不利な条件下にあるコミューン(村)の数の減少に努力している。このプログラムは、貧困者、貧困世帯、特別に不利な条件下のコミューン、貧しいコミューンなどを対象グループとして的を絞っている。;優先権は女性を筆頭とする貧困世帯に与えられるべきである。
● 2006−2010年の「特別に不利な条件下のコミューンの社会・経済開発計画」の目的は:生産における迅速な変化をもたらす;市場主導の生産に向けて農業の経済的過渡期プロセスを促進する、住民の物質的精神的生活の質を向上させる;国の民族間地域間の発展格差を削減する;2010年までに、貧困世帯の割合は30%以下に削減され、飢えに苦しむ世帯は無くなるだろう。
● 不利な条件下にある集団、貧困層に対して社会補助金や支援を提供するためのたくさんの政策が公布施行されている。その中には:貧困層、孤児、ホームレスのこども達、障害のある人々、老齢の単身者、HIV/AIDS感染者、貧困層のシングルマザー・シングルファーザーのための、補助金と、医療保障または無料健康診断を提供するための諸政策;自然災害、天災の被害者;居住するための土地、住居、生産のための土地、水などの支援・・・・。女性を筆頭とする貧困世帯への優先融資に関する政策に国は注目しており、多数のルートを通じて実施されている: 社会政策銀行、農業・農村開発銀行、外国組織の資金提供によるローン提供プログラム、国が支援する飢餓軽減と貧困削減において貧困女性を支援するための基金。
● 男女平等な土地へのアクセスを保証する政策が、効果的に施行されている。土地法の見直し以来、新に公布された土地権利書のほぼ90%が夫婦両方の名によるもので、これは女性が生産投資のために融資をうけようとしたり、商売をしたり、また何かあったときには女性の福利と利益を護るため、女性にとって有利な状況を創り出している。
● 世界的経済危機と、自然災害、伝染病、インフレなどの国内的困難に直面して、社会正義を伴った経済成長目標に到達すべく、ベトナム政府はさまざまな総合的な方策をとってきた。全国62の最貧ディストリクト(第三レベル行政区)における貧困削減への集中;2009年テトの祝日のための全貧困層に対する時期を得た手当支給;支給額レベルと貧困ラインの引き上げ。
● 現在ベトナムは、2020年にまでに人口のほぼ80%が社会的セーフティーネットでカバーされるという目標に到達するため、2011−2021年の社会保護戦略を開発中で、鍵となるのは、彼らが貧困克服のための支援を提供されるとともに、生計維持の可能な仕事を手に入れるということである。この戦略の中で、女性やその他の弱者グループにはしかるべき注意が払われている。

III  実施された活動と成果

「貧困削減のための国家目標計画」と2006−2010年「特別に不利な条件下にあるコミューンのための社会・経済的発展計画」は積極的に施行されその成果を見せている。さまざまなレベルの地域社会が連合し、資源を動員し、貧困削減と雇用創出をリンクさせ、仮設住居を撤去し、農業、林業、水産業の拡張を支援し、経済開発モデル、技術と科学の移転、生産と交易の村を開発するために提供されるローンと連関した耕作についてのトレーニングを受けた。はじめに、農業構造は市場指向の方向への変化をみせた;とりわけ不利な条件下にあるコミューンの人々の生活水準を改善、上昇させ、極度な貧困状態の軽減に寄与している。

貧困削減における社会保護政策、特に女性のための政策に政府は大きな注意を注いできた。信用貸し付け支援、雇用のための国家基金からの借入れ;農村労働のための短期援助、そしてその他教育・健康面におけるものなど。2006年の世帯生活水準の統計によると、貧困世帯にたいする優先融資の率は全国で39.5%、このうち女性を筆頭とする世帯と男性を筆頭とするものの割合は、それぞれ33.9%、41.8%だった。12ヶ月間の借入の割合は、女性筆頭の世帯で57.2%、男性で46%だった。受益者90.2%のうち、女性筆頭世帯と男性筆頭世帯での割合はそれぞれ、90.6%と89.2%だった。

社会保険は、人々ことに低所得層が健康サービスをうけられるよう財政的に支援する方法の一つと考えられる。社会保険の受益者は男性53.9%女性52.2%で、両者の間に大きな差はない。貧困層では、両者間にわずかなギャップがあり、女性12.7%、男性14.7%となっている。そして、強制的健康保険における女性、男性の率はそれぞれ22.2%、22.3%、任意では両者同率の9.9%である。

近年、女性にとって雇用と良い収入のチャンスは増大している。政府は、土地、情報科学、資本へのアクセスにおけるジェンダーの平等を保証する多くの方策をとってきた。例えば2003年、土地所有権利証書に名が載っている女性は12%だった。(寡婦か家族の稼ぎ手のいずれか)。しかし2003年の土地法修正のあと、この割合は90%に上昇した。これは女性が起業や生産のために借入をする際の保証金を作るのに有利な状況を創り出している。

貧困削減プログラムは、包括的に実行されてきた。2008年、ほぼ100万の貧困世帯が12のクレジットプログラムから優先融資を受け、65万の貧困者がビジネスや生産を行うトレーニングを受け、1400万の貧困者が医療保険カードを交付され、250万の貧困学生が学費を免除された。特別な困難を抱えたコミューンで550の建設事業が出資され、ほぼ10万の貧困世帯が住居建設への援助を受けた。ほぼ4万人の人々が、地域社会での生活が不可能になったとき、国または社会団体の社会保護施設でケアを受けている。

ベトナム中央銀行と農業・農村開発銀行は、ベトナム女性連合と共同して連合メンバー33万5,625名にローンを提供し総額3兆460億ベトナムドン(VND)の貸し付けを行ってきた。社会政策銀行は、4つの政治社会団体にその資金をゆだね、貧困世帯に優遇金利でのローンを提供してきた:具体的には、農民連合を通じて総額17兆1960億ベトナムドンの資金を信託、うち47%は女性世帯主の家庭、ベトナム女性連合に20兆6160億ベトナムドンで95%が女性世帯主の家庭、退役軍人連合に6兆2350億ドンで女性世帯主の家庭が27%、青年連合を通じて3兆2720億ドンで43%が女性世帯主の家庭である。
 
省のレベルで女性連合は、会員達を促して貧困削減と優良経済モデルの発展のために登記させることに重点を置き、そのモデルをコミューン、集落で再現した。同時に女性連合は、女性優良ビジネスクラブや女性起業家クラブ、女性が経営するビジネスを導入するための省内外での産業見本市などの活動を継続し効果的に実行した。こうした活動は、女性が雇用チャンスを手に入れ、収入を増やし、自分たちの経済的立場を強めるのを助けている。女性連合の第10回全国女性会議(2007年)でのレポートによれば、累計400万の貧困世帯(そのうち170万近くが女性を筆頭者とする世帯だった)が自分たちの生産を発展させるために信用貸し付けを提供された。2002年から2007年の間に、80万以上の世帯が貧困ラインを越えようと努力していたが、そのうち50%は女性を筆頭とする世帯だった。

ベトナム農民連合も、貧困削減に向けて多くの活動を行っている組織である。連合は、女性多数を含むメンバーの多くがよい事業を行い貧困軽減の努力をし豊かになるのを支えてきた。2008年5月までに、女性連合は6つの融資プログラムを委任された。これらのプログラムからの信用貸しによって、367万以上の農民世帯とメンバーが260億ベトナムドン以上の支給を受けたが、約28%が女性を世帯主とする家庭だった。

貧困削減、雇用、教育、職業訓練についての国家目標計画に対する国の予算は、同時に20%増加した。2008年に社会政策受益者のために直接使われる予算は19兆8000億VNDで、2007年に比して14兆7000億増加している。

現在までに、貧困世帯のほぼ90.2%が貧困削減計画関連のプロジェクト、プログラムによる利益を受けていて、このうち男性筆頭者の世帯では90.6%、女性筆頭者の世帯は89.2%である。貧困世帯の割合は2002年の28.9%から2008年13%に減少した。結果として、約3600万人が貧困から抜け出し、ベトナムは、期限の2015年の10年前に、貧困者の数を1/2削減するというミレニアム設定目標を達成した。

IV  教訓

-貧困削減と社会的保護は主要な一貫した政策と考えられねばならず、全国的・地方的社会経済開発計画のもとで、妥当な予算配分のある特定目標プログラムの中に位置づけられる。
- このプログラムの実行のために、社会全体を動員することが欠かせない。その中で国は、多数の諸組織の参加を拡大させるだけでなく先導的役割を果たす。
- 貧困削減は全社会的目標であり、その中で貧困者はプロセスの中心となり実行者となる。
- 貧困削減と社会保護には、ジェンダー対応のアプローチがなされるべきである。
- 門戸開放、グローバル経済への統合、海外資本の大規模導入は、ベトナムの雇用創出、収入拡大、貧困根絶、経済発展に重要な要素である。
- 貧困削減と社会保護との履行を通じて、技術、経験、資源の面で国際社会の効果的な協力と支援を利用することは、それぞれの国の成功にとって決定的な因子である。

V   困難と挑戦

● 世界的景気後退は生産原料の価格、必需品の価格を押し上げ、消費価格指数、ことに食品、食材の価格は急激に上昇し、貧困世帯、貧困地域に甚大な影響を与えた。・・・この事態は、今後貧困世帯削減の目標を実行するにあたり、乗り越えなければならない大きな課題である。
● 世界的流行病、自然災害、洪水は規模を拡大し、ますます頻繁に起こって、被害は貧困地区に集中し、回復力の限られた貧困世帯の生産、財産、住居に大きな損失をもたらしている。
● 実際のところ貧困の縮小は持続可能ではなく、貧困すれすれの世帯が高率に存在する。景気の低迷、自然災害、流行病、の影響のもとで、貧困ラインに近いところにいる世帯の多くが、貧困に陥ったり逆戻りする危険にさらされている。
● 全国貧困率は急速に減少している。しかしマイノリティーグループの貧困者層の全貧困人口に対する割合は、2003年の20%から2006年には36%と上昇傾向を続けている。
● 貧困層、とりわけ貧困な少数民族の社会サービスへのアクセスは投資のレベルに比べてささやかなもので、地理上の障害や貧しい教育環境が原因になっている。
● グローバルな経済金融危機は、持続可能な貧困削減と社会保護というベトナムの目的の達成に劇的な影響を与えている。被雇用者の間に新しい貧困グループが生まれてきている。

VI  将来の方向

ベトナムは貧困の削減において大きな成果を上げてきたが、富裕層と貧困層間の大きな格差のような挑戦すべき課題にいまだに直面している;貧困削減の結果は維持可能ではなく、ベトナムは未だ開発途上国である。従って今後2011-2020年のあいだに、ベトナムは以下の課題に焦点を合わせるだろう。

- 貧困削減は、人口の70%以上が生活する農村地帯と62の最貧ディストリクトに焦点を合わせるべきである。貧困削減は社会保護戦略全体の中に位置づけられるべきである。貧困削減は職業訓練と雇用また市場へのアクセスと密接にリンクするべきである。貧困削減は諸権利に基礎を置いたアプローチによってなされるべきである。

以下は、今後しばらくベトナムにおいて施行される、女性に焦点を合わせた貧困削減と社会保護関連の方策である:
● 十分な耕作地と基本的資源を提供し、新しい職での女性雇用の達成目標を設定して、全ての女性が労働と仕事の分野において自らの平等な権利を行使できることを保証する。女性労働者についての政策の実行のために法令を完成させ監視機構を強化して、職業訓練、社会保険、労働の安全、退職政策における有効性と平等を保証する。
2 ジェンダー問題を国家目標計画に効果的に統合する。
3 労働市場と職業訓練のジェンダー別データベースを確立する。
4 女性のための職業訓練と雇用サービスセンターを創る。
5 女性が資本の有効活用について指導を受けるのに好適な状況を創るため、信用融資システムと貧困削減プログラムの財源にアクセスする女性の能力を拡大する。
6 女性の専門技能向上のため、教育の機会均等を保証する。
7 孤立した地域や少数民族地区の女性に、中等学校、寄宿学校、単科大学、総合大学への進学を勧める。
8 貧しい女性・少女を支援し、学問分野でのジェンダーによる不平等を正し、ジェンダーを職業指導プログラムと結びつけ、教科書の質を見直し、性をステレオタイプ化する意見や映像を取り除く方策を執る。
9 さまざまな管理経営ポストへの女性の進出を促す。
10女性のための学習促進基金を設け、訓練、再訓練のさまざまなレベルで女性の占める割合に目標値を設定する。
11女性の知識を拡大し、ヘルスケアと家族計画サービス供給者の態度を変えることにより、女性の健康を向上させる。貧困女性が有利に健康サービスを受けられるよう保証する。産後サービスの質を高める。
12 家庭に役立つ技術、地方でのきれいな水とエネルギー計画に投資することにより、女性の家庭労働の重荷を軽減する。
13 家族内での女性と少女に対する偏見を克服して、全ての分野、レベルにおいて意思決定、リーダーシップ、管理運営ポストでの女性の役割を促進する。
14 女性労働者・職員についての政策を見直し平等な受益を保証する。政治行政訓練コースの全てのレベルでジェンダー問題を組み入れる。
15 女性の権利と利益を履行し守るため法律文書を改善し、社会経済開発過程での女性の平等な参加と利益を保証する。法的手段へのアクセスとその利用に関しての女性の意識を高める。
16 女性の前進のための政策と戦略を実行し、女性の権利と利益を効果的に守るための、行政諸機関と社会組織の能力を向上させる。
17 政策と地方での意思決定における女性の権利を強化する。

今後もベトナムは、貧困削減と社会保護のために技術的財政的協力のみならず経験の共有においても、各国・各国際組織との協力を続けていきたいと願っている。

 

■ 公開フォーラム
 
 
 開会のあいさつ Leticia Ramos Shahani(ミリアム大学学部長、フィリピン前上院副議長)
 
皆さま一人一人に「こんにちは」と申し上げたいと思います。まず、坂東眞理子昭和女子大学学長、また女性人権機構の理事長、有馬真喜子さん、事務局長の松田瑞穂さん、そして素晴らしいこのNGOの団体の皆さま、また昭和女子大学の教授陣の皆さまに対して、今回の第2回人間の安全保障シンポジウム「女性と貧困の撲滅」の参加者を代表いたしましてごあいさつ申し上げたいと思います。
 このシンポジウムは日本国外務省の後援により、女性人権機構の主催によるものでした。今回美しい昭和女子大学の、素晴らしい音響設備を持つ人見記念講堂にお招きをいただきまして、若い世代の女子学生の皆さま、そして日本の女性にお会いできることを大変うれしく、光栄に思っております。
 昨日の段階で専門家会議自体のプログラムは終えました。われわれにとっても、今回日本の女性、外務省のスタッフの皆さまとお会いでき、東南アジア諸国から参ったわれわれが知り合いになれたことは大きな機会でした。われわれは全く違った国から来たというよりも、インドネシアから来た人間もフィリピン人、あるいはカンボジア人、マレーシア人と区別が付かないぐらい似ております。歴史によって分かたれていたわれわれが一緒になり、いろいろな力によって引き裂かれていたわれわれがこのように一堂に会せたことを大変うれしく思います。われわれにとっても素晴らしい経験をさせていただきました。
 日本の人たちと直接お会いをし、今日の午後はこのように若い世代の人たちとお会いできました。そしてこの東南アジア、われわれ姉妹と皆さまがお会いできることになったというのは、日本の政府、またはNGOの皆さまのおかげかと思います。
 同時に、女子大学、あるいは女性のための大学に来られるというのは大変うれしく思います。女子大学に行くのがはやりの時期もあり、逆にはやりでない時期もありますので、今どういう時期か分かりません。ただ、個人的に考えますと、女子大というのは、私はマサチューセッツ州のウェルズリー大学に行きました。これはアメリカのヒラリー・クリントン国務長官が卒業されたところです。ということは、女子大学というのはリーダーをつくる、そして女性のリーダーの資質を形成します。若いとき、学校にあって、そして自分の目で女性の学長、女性の学部長、そして女性の教授に触れます。そして全く劣等感、あるいは優越感をお互いに感じることなくその環境に身を置くというこの伝統を通して、このGender equality、すなわち女性は男性に劣るものではなく、女性にも才能があり、社会に貢献できる能力を持つということが、皆さまのさまざまなインスピレーションの源にもなっていると思います。
 われわれにとっても素晴らしい機会を与えられ、このように皆さまの学校を訪れることができました。感謝申し上げたいと思います。また機会がありましたら、私どもの国を皆さまにも訪れていただきたいと思います。そのときにはアジアの隣国でわが家に帰ったようにくつろいでいただければと思います。21世紀というのは、アジアの世紀であるといわれております。これは世界に対してアジア人が一緒に何をできるのか、特に女性が何をできるかを示すときだと思います。
 基調報告 Thelma Kay(前ESCAP社会および女性問題担当部長)
ご紹介ありがとうございました。坂東学長、それから日本の未来の女性のリーダーの方々、こんにちは。今回この昭和女子大学で開かれている公開フォーラムに来ることができ、大変うれしく思っております。日本には旧知の人々も多く、そういった方たちの顔が今回このステージの上、この会場の中にも見えます。私自身はアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の社会問題部の部長をしておりましたので、いろいろなネットワークが日本にもあります。
 さて、今回の会議ですが、非常にタイミングよく開かれていると思います。といいますのも、私たちは世界的な金融危機から、今ちょうど立ち直ろうとしています。そして、これから先私たちはどのように成長しようかと考えているわけです。アジアという地域は今成長し、そしてこれから世界の経済を牽引するドライバーだといわれています。この中でアジアの女性というのはどういう状況にあるのでしょうか。
最初にアジア太平洋地域における女性の地位について、特にミレニアム開発目標に関してどのような状況にあるのかということについてお話します。このMDGsと呼ばれるものの目標は、開発に関して世界的に使われる基準となっております。最新のESCAP/ADB/UNDPのレポートが、このMDGsの開発状況についての内容を示しております。
 まず、金融危機の前、この地域は非常に大きな進展を見せておりまして、もともとこのMDGsは、2015年までに目標線を達成するということになっているわけですが、その中でもう既に幾つか達成しているものもこの地域にはあります。その達成しているものとしては、まず初等教育・中等教育においての男女間の差をなくす。オゾン枯渇物質の消費を削減する、そして安全な水を手に入れることができない人たちの数を半分にするというこの三つについては、もう既に達成しております。
 また、2015年の目標線は、オン・トラックということで、スケジュールどおりに進んでいるものです。
 初等教育に関しては100%子供たちを就学させます。
 それから、1日1ドル25セントの貧困レベル以下の人たちの人口を半分にするというものです。90年から2005年にかけて、1ドル25セント以下の収入しか得ていない人たちを、10億人から9億7900万人に減らすことができました。これはつまり約1億2000万人の人たちが貧困ラインから抜け出したということになります。しかし最低貧困ラインで見ますと、つまり1ドル以下の人たちというのがなお3億5000万人ぐらいいるということになります。
 しかしながら、現在アジアにおきましてはまだまだ多くの女性が貧困に苦しんでおります。そして、現在貧困ライン以下で暮らしている人たちの数、2010年度では約1900万の人たちがいます。これはほとんどオーストラリアの人口と同等です。
 また、妊産婦死亡率も一つ問題になっております。世界の妊産婦死亡率の半分の年間25万人というのは、実はこの地域で発生しております。これをちょっと図表にして考えていただきますと、非常にショックなものになると思うのですが、毎日5機分のジャンボジェットに乗る人数が、子供を産むということに関連して死亡しているのだということを考えてみてください。恐ろしいことだと思います。
 また、貧困というのにはたくさんの、多面的な側面があります。これは実は経済的なショックであるとか、食品とか燃料費の高騰であるとか、気候変動、国内紛争、高齢化、人権であるとか権利をきちんと享受できないといったようなさまざまな問題がこの中にはあります。さらに、男女間の平等がきちんと得られないということもここに含まれます。

 それでは、今から女性と貧困ということに的を絞ってお話をしてみましょう。男女ともに危険であるとか、脆弱性であるとか、危機ということに対して、違った対応をするものです。女性はマクロ経済とか、法律とか慣行の中で、しばしば差別的な扱いを受けてしまいます。
また、移民であるとか、身障者であるとか、先住民であるとか、より高齢者であるといったような、女性の中のサブグループといわれるような人たちは、さらに大きな問題を抱えることになります。
 だからこそここで実践される政策というのは貧困者のための、そしてまたジェンダー問題により身近なものとして設定されなければなりません。例えば基本的な社会サービスに関しては、それを使うという意味でコストを回収するとか、使用の料金を取るといったことは最低限にしなければなりません。それからまた、金融規制緩和であるとか、貿易の自由化といったものによって、悪影響が及ばないように考えていかなければなりません。

 それでは、このジェンダーに関係する政策について、少しお話をしてみましょう。例えば、女性は賃金の払われていないケアをするということも認識されなければなりませんし、社会サービスに女性がかかわることも多いこともあります。
 ここには三つの側面があると思います。まず、きちんと能力を持つということです。これは教育とか、スキルとか、健康とか、日本では全員が手に入れているもので、幸せなことだと思います。
 続いてチャンスを手に入れる、それからまた資源を手に入れるということがあります。女性も男性と同じように、資産であるとか資源、例えば土地とか、家とか、収入とか、それから就業の機会を得られなければなりません。
 3番目が安全保障に関するもので、危険とか、それからまた脆弱性に関係してきます。この安全保障の中には女性に対する暴力が入ってきます。これは富める国、貧しい国両方に現在ある問題です。
 最近またこのような複雑な問題に対して、幾つかの側面がさらに追加されました。女性に対する暴力というのは決して家庭内の話だけではなく、公的な懸念としてとらえられなければならないと今日ではいわれております。なぜならば、女性に対する暴力は人権に対する侵害であり、また、このような暴力を振るう人というのは刑罰に処されなければならないと私は思うからです。
 もちろん国によっていろいろな対策が取られています。新しい法律を施行するとか、国家として女性に対する暴力に対応する計画を作ったり、シェルターを作ったり、また国家的な委員会、警察、医療関係者、司法関係者、メディア、市民団体といった人たちを巻き込んでいろいろな活動が行われております。
 しかしながら、こういった対策がどれだけ効果があるか、継続して、どういった結果が出たかを常に私たちはモニタリングしていかなければなりません。実際ここ2日間、専門家会議で、私たちは各国でどんなことが行われているかに関して情報共有をいたしました。そうすることによって、どんなことが成功していて、どんな欠点がこういった計画にあるのかということをお互いに学び合うことができたわけです。
 最後になりますが、三つの主要なメッセージを皆さま方にお伝えしたいと思います。1点目として、この地域は非常に大きな進化をしました。しかしながら、貧困と、それからMDGsに関しては、まだ達成していないものがあります。先ほどのジャンボジェット5台分ということをちょっと思い出してください。
 2番目に、貧困というのは多面的な問題を持っているということです。従って貧困者に優しい、そしてまたジェンダー問題をきちんと理解した政策と行動計画が必要です。
 3番目に、女性に対する暴力は、家庭内のものではありません。これは権利の侵害であり、そして刑罰によって処するべきで問題あるということです。そして、これに対しては包括的な、複数の関係者を交えた、つまり皆さん方や私などを交えた行動をしていかなければならないということです。